鏡
連喜
第1話 アドレス帳整理
最近、アドレス帳整理にはまっている。携帯に登録してある女性たちに、取り敢えず連絡しまくって、もう使われていないアドレスかどうかを確認してる。・・・と、いうのは口実で、あわよくば、出会いを求めているわけだ。何百人と登録してあっても、誰か覚えてないし、相手も俺のことなんて忘れているだろうと思う。
でも、せっかく女性のアドレスがあるんだから、何かしら送ってみて、それをとっかかりにして、会えたらという期待があった。
ちょっと恥ずかしいけど、15年くらい連絡していないメアドに連絡をしてみた。普通はしないだろうと思うけど、ダメ元だ。俺みたいなチャラい男はそんなことは気にしてはいけない。あちらも暇を持て余していて、遊び相手を探しているかもしれないじゃないか。シカトされたって別にいいんだ。
俺は下記の文面をひたすらコピペして送りまくる。苗字が珍しいから、一発で俺とわかると思う。
『久しぶり。江田だけど覚えてる?アドレス帳を整理してて、懐かしいから送ってみたけど、まだこのメールアドレスって使ってる?』
書いていて糞過ぎるけど、10通送って返事がなかったら、次のブロックに行くということを1月前からやっていた。同じメールを二回送ってしまうことがないように、俺は通勤電車の中でも、慌てず、慎重に女性にメールを送り続けた。あいうえお順で、あ行からスタートして、まだメールを使っていたのは半分くらい。そのうちの1/3くらいは、それから連絡を取って会うことができた。
でも、みんな年を取ってたり、太ったりしいて、きれいな人は全然いなかった。メールを交換した時は、けっこうイケてたはずなのに、久しぶりに会って昔よりきれいになってたなんて人は皆無だった。
学生時代に知り合った男女が、社会人になってから再会して一目ぼれなんてのは若いから成り立つことであって、俺みたいな中年だと女性の老化にどれだけ妥協できるかという、我慢比べになっている。せっかく再会して、飯を奢ったんだからホテルに行こうかなと思うのは会う前まで。会ってみたら、こんなおばさんとは無理という人ばかりだった。変わり過ぎてて、待ち合わせ場所では気が付かないほどだった。俺も変わってるんだろうけど。
その中で、まだ許容範囲という人が数人いて、定期的に会っている。
でも、もっときれいな人と付き合いたかった。
先日、俺がメールを送った中の一人に、Aさんという女性がいた。前に働いていた会社の総務の人で、もう40代前半だ。(俺の中では)ちょっと年がいきすぎていると思うけど、取り敢えず出してみた。メールを出しまくっていれば、もしかしたら、壇れいや杉本彩みたいな奇跡の50代がいるかもしれない。それが、宝探しのようなもんで面白い。当てもなく送りまくって、メールに返事が来た時の喜び、そこから再会を期待してやり取りするワクワク感。そういう過程が、性急にお店に駆け込むよりも楽しかった。
彼女と知り合ったのは、15年前だから、まだ携帯メールが主流だった頃だ。今でもLineが主流と思いきや、キャリアメールは意外と今でも使われている。色々な調査があるけど、25%くらいの人はいまだに使っているし、メールアドレスだけ維持しているという人も多そうだ。
俺がAさんにメールを出した時は、15分くらいで返事が戻って来た。俺の中でAさんへの思いが膨らんでくる。Aさん。明るくて豪快な美人だった。
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