第55話 養老先生(2)
まだ8月の突き刺すような陽射しのなか、アリアと桃子は筋斗雲で風を切って進んだ。
「何かヒントがほしい。卑弥呼様は自立とおっしゃるが本当にそれでいいの?」
アリアはこのままではいけないという気持ちでいっぱいだった。
「着いた。養老先生宅」
アリア「お金持ちにしては以外と普通ね?」
桃子「鎌倉にも別荘があるみたいよ」
アリア「だよね~いこ」
アリア・桃子「すいませーん」
養老先生「来ましたか、待ってましたよ」
アリア・桃子「宜しくお願い致します」
養老先生「はい、宜しく、上がりなさい」
アリア・桃子「はーい、先生これお土産!」
「ありがとう。でもごめんなさいね、時間がね、なくて本題いいですか?」
本の山のなかで話し始めた。
アリア「今から13日後にアメリカとロシアに原爆が投下されます。これを止めたいのです」
「─────────────────」
桃子「この子の話には信憑性があります」
「私のとこに来るより防衛省に行ったほうがよかったのではアハハあはは」
「いやね。あなたがたを疑っているわけではないんです。予知能力がある人はいますから……ただ今から2発の原爆投下を止めることは現実的ではない」
桃子「なにかお知恵を拝借できないかと?」
「ん~む、日本は無傷かもですね!」
桃子「え?!」
アリア「それはわかっています」
養老先生「それならば投下までに邦人を帰国させることですね」
アリア「はい。止めることは無理だと?」
養老先生「うん。それ主張すると病院行きですね!病院が嫌いでね!」
アリア「先生お願いします」
養老先生「無理です。考えてもどうしようもない。可哀想だけどね……アメリカとロシアが被害を受けるということは中国が次の覇権を掴むことになります。中国を中心とした世界構図ができますね。日本も植民地になるでしょう」
アリア「大勢の人々が亡くなります」
養老先生「それも仕方がないことです」
アリア「仕方がない?」
養老先生「そうでしょう。女子高生2名が奮闘して今回、回避できたとしても実は何も解決したことにならないということです。いずれ起こるでしょう」
アリア・桃子「───────────」
養老先生「粛々と毎日を過ごしなさい。お祈りしながら日々暮らすしかないのです」
アリア・桃子「先生、ありがとうございました」
養老先生「はい、悲しい話だね」
現在の叡智を持ってしても解決策は見出せなかった。いや、これが答えなのだろう。現実を受け入れる勇気がほしい。
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