地球少女★アリア

嶋 徹

A第1章 『吸収木』

第1話 よい吸収草ができたな!


「おい、ル―タス。ここ枯れているぞ。種を蒔いておけ」


「はい。枯れた吸収草は抜かなくていいのですよね?」


「そうだ。枯れてもなお肥料になってくれる、ありがたい植物だ。うちらの村が避難した鍾乳洞からでてこうして外で働けるのはみんな吸収草のおかげだ。肝に銘じておけ」


「はい、わかりましたヌ―じいさん」


 東欧から端を発した第3次世界大戦から30年が過ぎようとしていた。両陣営ともに原子爆弾を使用した。両者とも過去から学んでいなかった。力なき賢者たちは洞窟や鍾乳洞をシェルターとして利用した。


 地球上の森林は20億ヘクタール喪失し、大戦前から半減した。世界は今、を求めていた。



 宮殿のなかで、アリアを見付けた国王は、


「アリア」


「はい、お父様」


「おまえ、また、境界線を越えて吸収草と雑草の採取に行ったな?」


「……はい。どうしても吸収草の仕組みを知りたいのです」


「仕組み?核で被爆した土から生え汚染された大気を吸収し、クリーンな酸素を排出してくれる植物だ」


「なぜ、なぜ吸収草にだけそんな力があるのですか?」


「……とにかく境界線をでるな。危険だ。今の吸収草はお金以上に価値があるものだからな」


「……わかりました。モグおいで」


「うん」


モグ(メス)は犬であったが染色体異常により脳が肥大し、子熊くらいの大きさがあり乗ることが出来た。他の犬も同様であった。また、話すことが出来た。人に一番近い距離にいる動物なので言語を学習したのであろうと思われた。


 アリアはモグに乗り、吸収草畑を目指して外に出た。


「風が気持ちいい。これも吸収草のおかげかしら」


(吸収草の寿命は3年。種を付けてくれるのは1回だけ。稲作もあるので吸収草の飼育面積だけを広げることはできない……)


 吸収草畑に着いた。収穫の時期。

稲よりも黄金色が強かった。あとは背丈も稲穂部分も類似していた。


「吸収草は稲の進化?!もしくは劣化形だという気がするの。どう思うモグ?」


「知らない。お餅食べたい」


「お餅はあげない」


「フン」


「アリア王女様!」


「ヌ―じいさん、こんにちは」


「光栄です。ちょっとこれを御覧ください」


「はい、新聞?」


「隣の村に行ったバカ息子が手に入れたものですが……」


「空軍による捜索を開始する?抵抗する者は処する!……ヌ―じいさん?!」


「はい、まだ懲りないバカ者がいるようで…」


すると


(バリバリバリバリ)


と轟音を立て、遠くの空から空挺の一団がこちらに進路とり飛んで来ているのが見えた。


 アリア王女は大きく深呼吸して出来たての空気を体内に取り入れた……

 


 

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