168 school
@KMZW_omg
フワトゲ(両片想い)←シュエくんの二次創作
夢を見ていた。
暖かい光の中に映る、大きめのシルエット。
ふわふわとした髪が揺れて、その後ろ姿はゆっくりと振り返り───
『────────先輩。』
優しく、自分を呼ぶ。
「ん…………」
頬を撫でる優しい手が耳元に触れ、ピクと身体が僅かに震える。
ゆっくりとその姿は近付いてきて───
『────────なおや。』
耳元で、そっと囁いた。
「ぅ、………ん…………」
思わず身を捩る。
近付いてきたシルエットはより鮮明に移り、白銀色のふわふわとした髪が視界を覆う。
─────直也?
(直也って、久真に呼ばれること…あんまないよな……)
普段と違う呼ばれ方に違和感を覚える。
徐々に現実に引き戻されていく感覚が、自分に触れているものを認識していった。
触れ合った手のひらは、強めに握られている。
(そういえば、唇も…なんかあったかいような…)
さら、と上から落ちる髪が、自分の額と擦り合う感覚に、ふと思った。
(これって、キ…………!?)
「────っ!!」
「ん、ぐ………ッ……!」
目を開けると、視界いっぱいに彼がいた。
混乱した頭の中で反射的に目を強く瞑り、再び暗くなった視界の中で必死に彼の胸を押し、精一杯の『抵抗』を示す。
シュエは、見た目は幼い印象だ。
だが、彼は曲がりなりにも元は魔獣なんだと、敵わない力量と体格が訴えてくる。
目を覚ましたことに気付いたのか、大きな身体はゆっくり離れてニコッと笑った。
「おはようなおや!」
「シュ、シュエ……!何して……ッ」
「なにって、ちゅーだよ?」
「ちゅーだよ…って……」
悪びれもせず言う表情から、その感情が純粋なものだと見て取れる。ただ『寝込みを襲った』という行為を汲み取ると言及せざるを得ない。
「…ひ、人が寝てる時はしちゃダメだって…!」
「そーゆーものなの?」
「そーゆーものです!」
「じゃあ起きてる時ならしてもいいよね?」
「え、ぁ、ちょ……っ…!!」
腕を引かれ再び唇を強引に奪われる。
ぺろ、と唇の上を舌でなぞられ、熱を持った肩は小さく震えた。
「ん、んんぅ…………!!」
ぐ、と力を入れて押しても引いても動かないシュエの身体に、塞がれた口で名前を必死に呼びかけても意味は大して無い。
固く閉ざした唇に、つんと尖らせた舌先がそこをこじ開けようと触れてくる。
「…っぷは……!」
「なおやかわいい。たべちゃいたい」
「たべ…ッ!?って、わ、あぁッ!!?!?」
大きめの手のひらが、服を捲り優しく腹部を撫でる。困惑している槇をよそに手は性急に上へ登り、一点を捉えた。
「や、ぁう……ッ!」
「ぁ、…っだ、ダメだって、シュエ…ッ!!」
「む〜………なんでぇ?」
そう言いながらも、自身の愛情を伝えるかのように優しく丁寧に触れてくる。ゾク、と背中に熱が走るのを辿るように、柔らかい手が身体をなぞる。
「…は……っあ……!」
「シュエ…ッこ、こういうのはホラ…っその…!合意の上で…ぁ……!」
「さわってもいい?なおや」
「っダぁメだってばぁ……ッ!!」
「む〜…………」
拗ねた顔をしながらもスッと手を離したシュエに、安堵した。
チラ、と視線を移すと、その横顔はどうも寂しそうで。槇の心に残ったのは熱の余韻と、動揺だった。
「はぁっ…………はぁっ…………」
「さわるのも、ちゅーもだめなの?」
「いつもなおや、してくれるのに…」
「…そ……れは…っ…」
普段は“獣の姿”のシュエに対して自分から抱きついたり、撫でたり、キスなんかもしてる癖にシュエからしてきたら急に『ダメ』なんて、自分勝手だという自覚はあった。
今は“人の姿”をしているが、きっと彼にとって多少姿の変化はあれど、気持ちは何ら変わりはないのだろう。
「ぼくはなおやが『すき』だから、いっぱいさわりたいのに…」
「………っ」
「……あさひなら、いいの?」
「……んぇ?!」
不意にその名前を出されてうわずった声が、なんとも情けなくて顔が火照った。
「え…っと……」
「いいなぁ、ぼくもなおやの『すき』がほしい」
「…………!!」
(その『好き』は───)
それは、久真に対してだけの気持ちだ。
それを他の誰かに求められても、渡すことができない唯一の気持ちだということは、とうの昔から自覚している。
「なおやの『すき』は、あさひにあげるんでしょ?」
「…わ、かんない………」
「…ん〜……?」
「じゃあぼくにくれる?」
「そ、れは…………」
他の誰かに、この『好き』はあげられない。
でも、わからない。
いつか久真に、言える日が来るんだろうか。
いつか、渡せる日が来るんだろうか。
それを渡したところで、ただ困らせるだけじゃないのか──────?
「…………」
「……いいや!でもぼく…それもらうの、あきらめたわけじゃないからね、なおや。」
「………っ、」
恋とは、なんて身勝手で、惨忍なんだろう。
諦めないと言った彼の真っ直ぐな笑顔が、こちらを見つめてくる。
自分の気持ちと向き合うことを避けるように、槇は視線を下に逸らした。
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