超科学《オーバーテクノロジー》で無双は禁止! ポンコツAI(美少女)と最強宇宙戦艦(女サムライ)と巡る異世界紀行

襟田タダスケ

序章 二つの世界の交錯点

●_001 王国軍と不審の男 01

 広大な新緑の草原を二分する広い街道の上を、鎧姿の兵士たちが隊列を組み移動している。


 騎兵五十騎と歩兵二百名に加えること魔法兵が十五名、うち四名が伝心魔法に長けた伝令兵。これが現在、帝国との国境に向けて歩を進めているフェラム王国軍の第五軍団第三部隊の構成だ。


 部隊を率いるオッティス・マルテンスは、歩みを進める軍馬の上で、空に輝く陽光を恨みがましく見上げた。


 付き従う兵は優秀だ。予定に遅れはでていない。しかし刺すような日の光は、重い甲冑を着て歩くだけでも体力を奪う。


 伝令兵に動きがあった。斥候からの報告に王国軍は足を止めた。



 距離千五百メーテ前方の草原に不審あり。数は1。レベルは未定義、保有魔力は0、スキルは検知されず。鑑定に支障多く詳細不明。魔法的妨害手段を保有している可能性あり。容姿面妖。判断を乞う。

 


 伝令兵が別の斥候からの伝心魔法を受け取り、感応紙へと不審者の姿を写し出す。


 受け取った感応紙に描かれたその姿に、部隊長のオッティスは思わず顔をしかめた。



「この男は裸か? しかもこの肌の色……塗りものか?」



 そう尋ねるのも無理はない。感応紙にある男の姿は、裸体に草色で丈の短い服を着ているだけだ。まるで裸の下半身をさらけ出すように。


 しかし、それよりも首から下の色が問題だった。


 首から下の一切が黒く、指の先まで隙間なく黒い。黒の中には怪しく光る緑の筋がいくつか見える。


 見識の広いオッティスでも見聞きしたことのない変わった姿だ。


 黒い肌をした人型の生き物。思い当たるがありえない。所詮は物語の中の存在だ。



「まさか悪魔でもあるまい。悪魔が上着だけ着るのが好みというのなら別だがな」



 オッティスは自身の不安をごまかすように笑って見せた。


 その言葉に伝令兵が報告を続ける。



「斥候からの報告によると、裸に見えるが、体毛や陰茎は見えず黒色の薄い肌着ようなものを全身にまとっているのではないかと、雨に濡れたように肌に密着しているのではないかと」


「ますますわからんな。だが人間であることに違いないか」



 黒が衣服の色だとわかり、軽く安堵を覚えたオッティスが続ける。



「レベル未定義とは棄児か。教会での評定を受けぬままで魔法技術を習得できるとは考えにくいが、さて。伏兵は?」


「伏兵は確認できず、不審者一人のみです」


「ふむ、今は進軍するが主命、当たってみるしかあるまいよ。斥候の程度は?」


「はっ。弓術のスキル持ち一名レベルが22、剣術スキル持ちが二名、レベルは19と20、魔法スキル持ちが二名、レベルは20と26。火炎魔法を得意とします」


「十分か。斥候に伝令。可能であれば生け捕り、困難ならば排除せよ。魔法行使も許可する。将軍に報告を上げる」

 

 オッティスの命を受けた斥候部隊は不審者に対して行動を開始した。






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