第5話

 母の記憶


「もしかしたら…、しゃぶしゃぶを食べた帰りだったかしら…。それともケーキの為にあのビルに入ったんだったかしらね…。エスカレーターで下に行ったような…。夜だったからか、ちょっと薄暗いような雰囲気で…。でも、なんだか素敵な…。素敵だったかしら…?お店でケーキを食べたのか、買って帰ったのか…、忘れちゃったけど…。小学生くらいで、夜のお出かけ自体が珍しくて、しかも独特の雰囲気があったのよね。ほら…。昔からのホテルとかもそうだけど、そこだけ…なんだか人気ひとけがないなって場所あるじゃない?ちゃんとした建物だし、もちろん綺麗だったり立派だったりするのに、なんだか寂しいような…。でも、小さい頃の記憶だし…忘れちゃったけど…。いつものケーキが、なんだか澄ましてるような気がしてね…。思い出した。結局買って帰らなかったのよ。閉店直後で買えなかったのかしらね。ガッカリした気がする…。」


 ふむ。

 甚だ曖昧だけど、話しぶりからして母は、きっとその時かなりワクワクしていたに違いない。



 なんだか興味が出た私は、少し調べてみたがハッキリしなかった。


 そして、思いきってトップスに問い合わせてみることにした。



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