砂漠と異物
エ
詩・砂漠と異物
迷い込んでしまったようだ
オアシスなんかない
地上の空論に
トイレだけのPA
自販機なしの方がまだマシだ
どれだけ足掻いても
どれだけ叫んでも
響くことはない
前までオアシスがあった形跡は見かける
この世界は
終に遂わってしまったようだ
遠くには人影のようなそんな物体が
ユラリユラーリとコンテンポラリーなダンスを描き
私と同じように徘徊している
オアシスを
視に見えない楽園を探している
おい、そちらの方よと声をかけたくても
届かない
置いていかれる
滅ぶ
やがては---だけども
そらには時にその優しさで
人を欺く化物が
生きる為に
日々の力を出し
砂漠の海へと没落し
辺りを只只暗く
誰も救ってはくれない
センスレスな混沌とした世階を創造する
先程のユラリ体は何だったのだろうか
人のような
そうでもないような
眠ってはいけない
どんなに疲れがピークに達していようと
思考回路が滅んでも
行動は滅せない
オアシスは依然として見つからないが
形跡は見つけた
ただ、ない
こんなに一辺倒を
彷徨う僅類でさえも
発見できない
姿すら見せてくれない
この世は
何て不平等なのだろう
私はいつまでも
ここにいなければならないのだろうか
どうか救っておくれ
今まで信じもしなかった神に乞う
ただ行動を滅ぼさないが為に
くだらない
くだらない
やめろ
くだらない
やめてくれよ
お願いだから
聞いておくれよ
私の身体を操る邪悪な意識よ
両手が絡まろうとしたとき
頭上を
心のように真っ黒な異物が
秒速5.0で通り過ぎる
眼は白く綺麗で混じり気がない
身体は黒い布に覆われているかのように
ヒラヒラとしていて
不気味
でも
どこか
懐かしい
小さな声で呟きながら
何を言っているかは分からない
その黒い異物は
2キロ先で砂漠に降り立った
何かを見つけたのだろうか
歩を進めていく内
妙な物体につまづいた
砂を掻くと
白い筒の鉄製の物体が出てきた
もしや
やっぱりな
天体望遠鏡が埋まっていた
脚の一つに
「鐸木来・青」と書かれたシールが
無風の砂漠に
傷つけられることなく
その当時のままに
無表情でこちらを覗っている
その望遠鏡を覗くと
あの異物が佇んで
静止し
静寂に身を委ねている
人間に姿を変え
ユラーリユラリと
歩き始めた
私の目が生きていた
僅か前に見たあの人影は
あの
異物であった
ただ人間に姿を変え
何をしているのか
一時間ほどそれを観察していると
異物人は「人」を見つけた
手招きをし
その「人」を誘い込み
何か話している
その「人」が歯を見せながら笑った時
その異物人に首を掴まれ
やがて
崩れ
完全に
サラサラの
汚れのないとは言い切れない
黄土色の塵となって
一体となった
私が彷徨っていたのは
これまで生を受けていた
「人々」であったのだ
思わず声を出し
異物に気づかれてしまった
これで私は
何もかも取り戻せなくなった
人の姿のまま
私めがけて
まるでジェット機のごとく
その人型は
あの「人」と同様に
私の首を掴み
締め付けた
やめてくれ
死にたくないと
力を絞った声で問うても
何の光もない眼を合わせ
呟いている
飛んでいる時と同じ長さで
ブツブツと
笑え 笑え 笑え
笑え 笑え 笑え
永遠と繰り返している
ここで笑えば
私も塵々になり
誰とも会えなくなる
それだけは
避けたかった
誰かと会える確率は
ほぼ0パーセント
とにかく
異物から離れるには
拒否を続けなければ生き残れない
必死に拒否を続け
やがて姿を変え
私を連れて空へと昇っていく
これからどうなってしまうのか
もっと酷い亡骸として
処理されるのだろうか
あるかもしれない死に恐怖を抱きながら
私は久々に風を受け
清々しい気分に
僅かではあるがそうなった
ただ死というのは
いつか迎えるもの
異物に落とされ
私は空を切る
落下速度が上がる
眼下の死骸に落ちても
助からない
いつまで経っても落ち続けている
辺りはさっきよりも
暗闇が深く感じる
砂と砂の間
断層にいるようだ
でも
どっちみち
生きる希望も
死にたい希望も
眠ったまま
私の身体を
素直に
誠実に
純粋に
笑顔を崩さず
奇跡のような幸せもなく
蝕み 尽くし やがて 砂になる
オアシスも 緑もなく あるのは そう
鋭利な視線だけ
目の前にあるのは
光る白い視線
ハハハ
すべてが黒くなった時
私は
諦めを覚悟し
断層を彷徨った
砂漠と異物 エ @rwafri0078
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