第25話 彼女は学校での出来事が気になった

 その日の夜。俺は侑梨と夕飯を食べながら、学校での出来事を話していた。ちなみに夕飯は生姜焼き定食である。


「美唯さんには大丈夫でしたか?」


 侑梨は首を傾げながら聞いてきた。彼女が心配そうに聞いているのはメールで話していた揶揄いについてだろう。


「大丈夫じゃなかった。あのメールしている時に大浪さんが後ろにいて内容を見られた」

「あらら…それでどうなりましたか?」

「チャームのことを聞かれたから、聞かなくても分かるだろと言った。そのあと大浪さんがデートの時のことを色々と教えてくれたよ」

「っん!!!!!美唯さんは変なことは言ってませんでしたか?!」


 侑梨は目を大きく見開くと、少し震えながら質問してきた。

 その様子を見るに何か聞かれたくないことでもあったのかと思いながら、俺は大浪さんとの会話を少しだけ思い出していた。


『直矢くんの話をしている時は常に満面の笑みでしたから』

『ペアチャームとプリクラの落書きの時は可愛かったな〜』


 これは…変な分類には入らないな。

 寧ろ、俺にとってはお出掛けの時の知らない侑梨を知れたからな。うん、得してるな俺。


「直矢…くん?どうしたのですか?」


 侑梨は首を傾げながら声を掛けてきた。

 彼女が質問してきてから数分無言になり、その後1人で頷いていたからだ。


「いま大浪さんの会話を思い出していたんだよ」

「それで!!!」


 侑梨は少し机から身を乗り出して言ってきた。

 服に夕飯のおかずが付きそうだったので、俺は侑梨を座るように促して口を開いた。


「変なことは言ってないよ。デートの時に侑梨が楽しそうにしていたくらいで」

「ほんとですか?私は直矢くんのことを信じてはいますけど、美唯さんがそんだけとは思えないのですが?」

「大浪さんのことかなり分かってきてるんだね(笑)だけど俺との会話の時はそれくらいだったよ」

「そうですか…分かりました。直矢くんの言葉を信じますね!」


 俺は頷き、そして微笑した。

 

「それじゃあ、おかずも冷めそうだし早く食べないとだな!」

「ですね!お肉が固くなると美味しくなくなりますもんね。直矢くんには美味しく食べてほしいので!」

「あはは。ありがとう。今度は俺が侑梨に何か作ってあげるよ」

「とっても楽しみにしてますね❤︎」


 侑梨は微笑しながら胸元でハートマークを作った。それを見て、俺は何だか嬉しくなっていた。


XXX


side 芹澤侑梨


 直矢との夕飯と夜の身支度を終えた侑梨は自室にて自分のスマホと睨めっこをしていた。

 

「一応美唯さんに聞いてみようかしら…直矢くんのことを疑っている訳ではないのですが…」


 侑梨が聞こうと思っているのは、学校で美唯が直矢に変なことを話していないかだ。


「それでも気になる…」


 侑梨はボソッと呟くとスマホのメッセ画面を開いてポチポチと素早く打っていく。


『直矢くんとの話で変なこと言ってませんよね?』


 そして美唯に送信した。


 数分後。美唯から返信が返ってきた。


『変なことは分からないけど、直矢くんの話をしている時は楽しそうにしていたよ!くらいは言ったかな〜』


 内容は侑梨が気にしていたことはなかったのだが、『直矢くんのことを話している時に楽しそうにしていた』という内容に顔を赤くしていた。

 

『デートの時に侑梨が楽しそうにしていた』


 直矢が言った言葉が実はそのことだったと知った侑梨は美唯に一言返信して枕を抱き寄せた。


 そして枕を口元に持ってきてボソッと呟いた。


「直矢くん…私にとってはその台詞は恥ずかしいこと…つまり変なことなんですよ…バカ」


 そのまま侑梨はベッドに横になって目をゆっくりと閉じていった。

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