初めて感じる温かさ



 温かい……





 体の中で暴れる熱とは明らかに違う、微かな温かさを感じた。



「大丈夫だよ。」



 優しい声がした。



 誰だろう…?



 ぼんやりとした視界で探すと、目の前に知らないお兄ちゃんがいた。



 目の前にいるはずなのに、そのお兄ちゃんは、なんだかとっても遠い所にいるように見える。



 お兄ちゃん、誰?



 そう訊こうと思ったけど、声が出なかった。



 お兄ちゃんは何回も〝大丈夫だから〟って言ってくれた。

 頭をなでてくれた。

 手をぎゅっと握ってくれた。



 そうしたら、なんだか熱くなくなってきた気がした。



 お兄ちゃんが痛くないよって言ってくれたら、痛いのも気のせいみたいに思えた。

 頭をなでられている感じと、手を包む温かさが心地よかった。



 こんな気持ちは初めて。

 なんだかとても、安心できる。



 とっても……温かい。



 嬉しくて、ほっとして、力が抜けた。





 目の前が真っ黒になって、それから―――




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る