世界の十字路9~真紅に汚れた契約~

時雨青葉

プロローグ

最後の願い



 ―――ああ、世界が遠い。





 きっと私は、このまま死んでしまうのだろう。

 なんとなく、そうだと分かる。



 この暗い部屋に閉じ込められて、もうどれくらい経つだろう。

 昼も夜も分からないこの部屋にいると、時間の感覚もなくなってしまう。



 牢獄のようなこの部屋は、私から夢も希望も、足掻く意志すら奪い取っていく。

 それなのに、胸にくすぶる憎しみだけは決して拭い去ってくれない。



 癒されずに放置された憎しみは増長するばかりで、私を暗く歪めていく。



 呪われてしまえばいい。



 私をおとしいれた者。

 私を汚した者。



 みんな、みんな呪われてしまえばいい。



 ―――ああ、でも……



 あの子だけは、助けてあげられないだろうか。

 私から離されてしまったあの子には、きっと守ってくれる人などいないから。



 ずっとずっと、あの子に向かって力を放ち続けてきた。

 離れてても、どうにか守れはしないかと全力を尽くした。



 けれど、それももう叶わない。

 私は、あまりにも無力だった。



 ああ、どうか。

 どうか、あの子を守ってください。



 憎しみも復讐もどうでもいい。

 この身を全て犠牲にしてでも、あの子を守りたいのです。

 呪われたこの状況から、あの子を解放してあげたい。





 たとえ唯一血を分けたあの子が、この世で一番憎い男との子供だとしても―――




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