残り時間の使い方

@wadadamohu

第1話 優子の病

あれは桜が満開の季節だった。友達と桜を見ながら下校していた時のこと、一瞬にして空と地が真逆になった。




「優子!?優子!!大丈夫!?」




隣で聞こえる夏美の声。私は反応しようにも反応出来ずにそのまま目を閉じた。





目を開けるとそこは見た時のない天井だった。横には母がいつもなら美しい二重なのに腫れぼったくなった目でこちらを見ていた。





「優子…。大丈夫…?」


「うん…。それよりここどこ?」




母は俯く。そして十数秒の無言の時間の後に鉛のように思い口を開けて言った。




「ここは病院。そして、優子。あなたは残り2年の命なの。」




母は泣いた。私は初めて母が声を出して泣いているのを聞いた。意味はわからなかった。毎日当たり前のように学校に行って当たり前のように過ごす日々が後2年?




その後に医者が平然と部屋に入ってきて話を聞いた。私は1万人に1人の難病らしい。治療する手術も薬もない。だから限られた時間を大切に生きて欲しいとのことだった。





泣いている母を見ながら私は決めた。





死ぬまでにやりたいことリストを完成させよう。

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