七夕

蝶 季那琥

流れ星

 織姫と彦星が年に一度会える日と言われている七夕。


 私は七夕が嫌いだ。


 大切な人がだから。


 笹に飾り付けれた短冊に、少なからずの妬みを覚える。


 〇〇と結婚出来ますように


 私が見た結婚ゆめを、他人は易々と叶えることが出来る現実。


 短冊に願いを書いても、叶わない。


 あなたに会いたい


 夢でいいから。一時間、数分、数秒でも構わない。


 だから、どうかあなたにもう一度会わせて。


 あなたのお墓に手を合わせ、目を閉じる。


【⠀早く迎えにきて⠀】


 この願いも叶うことは無い。


 あなたはきっとを赦してはくれないから。


「また来るね」


 そう言い残して、夜空を見上げた。


 キラリと流れる星に呼吸を忘れ、ふと思い出す。


『来世でも俺はお前と結婚するよ』


 あなたの満面の笑みとそのコトバ。


「あ…」


 あなたを失った事で、忘れていた大切な思い出。


「うん…はちゃんとしてね?」


 お墓に振り返り、泣き笑いをする。


 あの流れ星は、いつまでも立ち直れない私を見かねたあなたが、見せてくれた奇跡。


 来世、あなたにもう一度出会う為、私は前に進む一歩を踏み出す。


 フワリと吹いた風に、優しく背中を押された気がした。


 おわり

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七夕 蝶 季那琥 @cyo_k

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