幽霊オークション

武州人也

幽霊、売ります

 俺はオークションサイトで、幽霊を販売している。その辺で捕まえた幽霊をパック詰めして、出品しているのだ。


 もちろん、映画「ゴーストバスターズ」みたいなことを実際にしているわけじゃない。事件や事故の現場、墓地、心霊スポットなどに通学定期券で行ける範囲で赴いて、ちょうど人間の心臓が入りそうなサイズのからタッパーに空気を詰める。そのうえで年齢と性別、おおまかな採集場所を書いた紙の札をタッパーの蓋に貼りつけ、「幽霊の魂が入っている」というていで出品している。それだけのことだ。まぁ、自分で言うのもなんだが、詐欺商品だと思う。タッパーの中に霊魂が入ってるかどうかなんて、誰も証明できないんだから。現地で採集っぽいことをしているのは、顧客に対するせめてものだ。

 

 だいたいの幽霊は、一つ二千円から三千円スタートで売っている。「こんなもん、誰も買わないだろ」と思っていたが、誰かがおふざけで買っているのか、それとも動画のネタにでもされているのか、ちらほら落札されることがあった。さすがに値段が大きくつり上がることはなく、そのほとんどはスタート価格でそのまま落札されるのだが、「本当に入札するやつがいるのか……」と、正直びっくりした。

 落札されるのはほとんどが十代か二十代の女性だ。それ以外は誰も入札してくれない。一度だけ七十代男性と二十代男性が落札されたことはあるのだが、男性の幽霊が売れたのはそれきりだ。こうした売れ行きの傾向から、次第に若い女性の幽霊しか出品しなくなった。幽霊でさえ市場原理には逆らえないのかと思うと、なんだか面白い。大学のレポートのネタに使えないだろうか……なんて思ってしまう。

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