第13話 初冒険者活動が、危機的状況に!?

タリアが戻ってきていたのだが、冷や汗を大量に掻いて、かなり慌てている。


「凄い汗だが、何かあったのか?」


ドンは、ここまで焦っているタリアを見たことがないので、爆炎テントウムシ以上の出来事が起きたと予想する。


「デッドリーポイズンキラービーの女王が......生まれちゃったよぉ。女王のせいだよぉぉ。早く逃げなきゃ」


「おい!マジかよ!?爆炎テントウムシの時点で気付くべきだったな。今すぐ冒険者ギルドに知らせに......おいおい、嘘だろ」


爆炎テントウムシが、集団で密集していたのは、デッドリーポイズンキラービーの女王が生まれることを悟って身を守っていた。

そして、ドンは冒険者ギルドに知らせに行こうとしたが、大量のデッドリーポイズンキラービーが現れた。


「全員、僕の後ろに隠れてください!炎魔法放ちます。火の精霊よ。敵を紅き炎に染め、全てを無に返せ!フレアフレイム」


大量のデッドリーポイズンキラービーが迫る中、ジェフは全員の前に立ち、詠唱を済ませて、大量のデッドリーポイズンキラービーを飲み込む炎を放った。


「タリア、今すぐ冒険者に知らせて来い!俺達で食い止める。ミナトは、俺達と戦ってくれないか?恨むならいくらでも恨んでくれて構わない」


このままでは、他の冒険者や街に被害が出ると考えたドンは、一番足が速く危険を回避しながら街に戻ることのできるタリアに救助要請をするようにお願いした。

そして、出会って間も無いF級のミナトに戦えと無茶を言う。


「私が行くのはわかったよぉ。でもでも、ミナトくんは、連れて行かなきゃだよ。死んじゃうよぉ〜」


「タリア、俺なら大丈夫。これでも、ドンに勝ったからさ。タリアは、応援を呼んで来るまで死なないから」


タリアは、事前にドンからミナトは、最低でもCランクの強さがあると聞いていた。しかし、少年のミナトが本当にCランクの強さがあるのかと疑っていた。更に、Fランクの冒険者を戦いに巻き込んだとあっては、ドン達パーティーが何か処罰を受けてしまうと考えて連れて行く選択をした。


「い、行くなら早く行ってください。僕の魔力も限界で......す」


ジェフは、タリアが街に行くにしても行かないにしても、魔力が限界を迎えていて、早くどちらにするか決めてほしいと思っていた。


「ミナト!剣を抜いて構えとけ!タリアは、行って来い。責任は俺が取る。投げ飛ばすぞ」


「え!?え!?ちょちょ、ギャァァァァァ」


ドンは、どうしようか迷っているタリアを持ち上げて、空を見上げながら槍投げの要領で街の方に向かって、全力で投げた。


「色々と無茶苦茶だな。まぁ、俺のことは、ドンが信じて頼ってくれたんだろ?全力でやってやる!任せろ!」


「ドンさん、申し訳ございません。僕の魔力は限界です。あとは、お二人にお任せします。はぁはぁはぁ」


タリアを投げ飛ばしたこともそうだが、出会って間もないドンが信じてくれたことが嬉しく、全力で協力しようと思った。

そして、ジェフは魔力の限界に達して、その場で両膝を突く。


「あとは、俺達に任せろ!ミナト、応援が来るまで、ぶっ殺し回るぞ」


「アハ、やるしかないな」


ドンは、両手に斧を持ち、片方の斧をデッドリーポイズンキラービーの顔面目掛けて投げる。そして、ミナトは襲い掛かってきたデッドリーポイズンキラービーの真下にスライディングをして剣先を突き立てて腹を切り裂く。


『ナノ、アドレナリンありがとうな。本当なら怖いはずなのに、全然怖くない。それに、ナノが敵の位置を知らせてくれるから心強いよ』


『えへへ、ナノはご主人様の横にいつでもいます。だから、全力でやっちゃってください』


ミナトとナノも、出会って短いながらも、お互い信頼し合う仲になっていた。

そして、ナノがドンとの模擬戦でしてくれたような敵の位置を知らせてくれて、どんどんデッドリーポイズンキラービーを切り刻んでいく。


「やっぱりな!俺の目に狂いはなかったぞ。デッドリーポイズンキラービーくらいなら余裕だな!だが、女王まで辿り着くまで体力が持つかだ」


女王の周りを守るように集まるデッドリーポイズンキラービーと、ドンとミナトに襲い掛かってくるデッドリーポイズンキラービーに分かれて行動しており、女王がしっかりと統率を取っている。


『ご主人様、ジェフさんが狙われます!早く向かってください』


「クソ、ジェフさんをターゲットに切り替えたか!」


ドンもミナトも盲点であった魔力切れのジェフを狙って、二人を焦らせようとしている。

しかし、ミナトはジェフが襲われる前に、ナノから知らされたので、自分に襲い掛かるデッドリーポイズンキラービー2体を瞬殺して、ジェフに襲い掛かろうとしている3体のうちの1体に解体用のナイフを投げて、2体を切り刻んだ。


「怪我はないですか?」


「は、はい!ミナトさん、助かりましたけど、あなた何者ですか!?」


ジェフもタリアと同じで、ミナトのことをドンが誇張して言っているのだろうと思っていたが、先程からの大立ち回りやジェフを助けた動きが、ベテランの冒険者以上で、素直に驚いてしまうのだった。

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