第13話:ストーカー確定なんだが

 一人暮らしの俺の家に珊瑚さんが単独乗り込んできた。しかも、彼女は家の鍵を持っていた。ストーカー疑惑はかなり濃い。


 さらに、翌朝は部屋の新聞受けが生ゴミでいっぱいに満たされていた。わかり易い嫌がらせ。


 昨日の報復だろうか。


 でも、これで決定だな。

 珊瑚さんが俺のストーカー。



 *



「今日からバイト休もうか?」



 朝の俺の部屋で藍子さんが不安そうに言った。



「いや、むしろ藍子さんも危ないだろ!」


「ううん、私は狙われないの。あの女の狙いは、高志だけ」


「そうなの!?」



 愛子さんは、この部屋の家賃を払うためと生活費のためにバイトしてる。大学も行っている。高確率で昼間から夕方まで外出する。


 狙われ放題の俺が情けない。



「ごめんね、高志。今日もバイト抜けられないし……シフトが……」


「俺こそ、ごめん。バイト頑張って」



 不安な顔をしつつも、今日も藍子さんは大学とバイトに出た。


 部屋には暫しの静寂が訪れた。



「ふぅ」



 ベッドに腰掛けたところでため息が出た。


 珊瑚さんがストーカー。今んとこ被害は新聞受け以外ないけど、あまり続くと藍子さんが危ない……気がする。


 何かしらの対策を考える必要がある。



 洗面所に行き落ち着くために顔を洗った。鏡の中の俺の顔は酷い顔をしていた。


 やつれてると言うか、痩せこけてる。頬がコケてるし。


 ここで俺は気づいた。気づいてしまった。首に歯型が付いている。


 先日、興奮した藍子さんが首に噛み付いたのは覚えている。でも、そんな生易しいもんじゃない。


 無数に噛み跡が付いてる! しかも、新しいのから古いのまで!!


 なんだこれは!?


 途端に吐き気が込み上がるが、何も出ない。そう言えば、俺が最後に食事をしたのはいつだ!?


 はぁはぁはぁ……髪は適度に短い。でも、普段の俺の髪型じゃない。


 なんだこれ!?



 ここで、俺は気づいた。



 俺のストーカーは藍子さんの方では!? 今現在が監禁(軟禁?)されている状態では!?



 そう考えると、全てが疑わしい。俺を部屋に軟禁してて、身の回りの世話をしていた!?


 そして、珊瑚さんは俺を救出に来てくれた!? もし、そう考えると、孝之が病院送りにされたってのも本当!?


 確かに、いくらストーカーが不法侵入してきたからって、包丁を構えるか!?


 藍子さんの異常行動にも合点がいく。これか!これを回避するためのタイムリープか!



「そうだ! LINE!」



 珊瑚さんには、直接会わずに話を聞けばいいんだ! なにか分かるかも!?


 俺は急いでスマホを取り出した。



「聞きたいことがあります」


『あの後、大丈夫だった?』



 珊瑚さんからはすぐに返事があった。あんな事があった直後なのに、俺のことを心配してくれている。


 とても悪い人には思えない。俺は珊瑚さんに質問していくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る