第29話 踏んでみた

「駄目っぽいな」


神への反逆だ!

的な感じでいいえを連打したが、やはり無限ループの様に言葉を変えてモニターが勧め続けてきやがる。


しかもはいといいえが逆転する様な聞き方の、引っかけ問題出してくるあたり悪質感が凄い。

適当にいいえを連打してたら、危うくオーケーになってしまう所である。


……女神さまは俺に何をやらせたいんだ?


佐藤と和解してその妹を救う。

物凄く主人公っぽいムーブさせようとしてるけど、俺はそういうのガラじゃないんだが……


地味に一人で黙々と魔物を狩るのが、コミュ障の俺にはお似合いである。

佐藤と仲良くする気も。

ましてや、その妹とイチャイチャする様な展開とか真っ平御免だぞ。

まあそんなのがあるかは知らんけど。


まあ仕方ない……


「報酬があるっぽいのだけが救いだな」


断り続けたお陰か、達成したら報酬が貰えるようになった。

やっぱ何事も安請け合いは駄目だな。


まあそもそも受けるつもり自体なかった訳だが……


「しかし……本当に俺に呪いなんて解呪できんのかね?まあ普通に考えればアビリティ関連だよな……」


パネルは、俺なら解呪出来ると表示していた。

やり方までは教えてくれないが。


「とにかく……」


俺は『救いますか?』の問いかけに『はい』を選択する。


問いかけを無視するという選択肢はない。

パネルが出っぱなしだし、なにより……時間が止まったままだからな。

用意された答えを選ばん事には、時間が動いてくれないのだ。


あ、因みに……時間停止中は、この場を離れたりとかは出来ないようになっている。

放置してどっか行ってみようと試してみた所、強制的に動きが巻き戻された。

ほんと、理不尽極まりない話だ。


「頼む!この通りだ!」


時間が動き出すと、佐藤の懇願が再開される。

俺は何となく土下座しているあいつの後頭部の上に足を置き、ため息交じりに答えた。


「しゃあねぇなぁ。妹を見てやるよ」


「ありがてぇ!」


佐藤が顔を上げようとするが、俺はそれを足の裏で阻止する。

勝手に顔を上げてんじゃねぇ。


「あ、あの……許してくれたんじゃ?」


「何言ってんだ?妹を見てやるとは言ったが、俺がお前を許すとは言ってないぞ?」


なんで俺がこいつを許すんだ?


恨みは深くはない。

が、その軽重と、許す許さないは別問題だ。


軽けりゃ無条件で許さないといけないのか?

んな訳ないよな?


なので俺はコイツが嫌いだし、許す気もない。

妹の件を進めるのは、めんどくさい【運命の分岐】を終わらせるためだ。

勘違いして貰っては困る。


「そんな……」


「安心しろ。妹の事はちゃんと対処してやるから」


どうやるのかは知らんけど。

まあアビリティが出来るって言ってるんだから、きっと出来るはずだ。


「あ、ありがてぇ!助かる!」


佐藤の後頭部に片足立ちしてみるが、特に苦しがる様子もない。

頑丈な奴だ。

ああいや、魔法で肉体を強化してるのかもな。


まいいや。

なんとなく足を乗っけてみたが、あんまり楽しくもなかったので俺は佐藤の後頭部から足を降ろした。


漫画とかだと、土下座してる相手にこれやって悦に浸るってのがあるけど、そういう奴の思考は俺には理解できんな。


「とりあえず……その呪いで偉い事になってる妹の所に案内しろ」


解呪方法なんて皆目見当がつかないが、とりあえずどういう状況か確認だ。

ひょっとしたら、呪いを受けてる人間に接触したらアビリティが湧いてくるかもしれないしな。


「呪いがかかってから妹は家に戻って来てるんだ!付いて来てくれ!」


佐藤が飛び起き、嬉しそうに駆け出す。


え?

俺に走ってついて来いって事か?

舐めてんのか佐藤は。


気が逸ってるんだろうが、本当にふざけた態度である。


「……」


ふと……分岐で『はい』を選びはしたものの、ここで佐藤を無視して帰ったらどうなるんだろうかって考えが頭を過る。


「……まあ止めとこう。なんとなく、きっついペナルティをかまされそうな気がするし」


女神さまが関わってるイベントだしな。

強制とは言え、受けた癖に無視したら何をされるかわかった物ではない。

面倒臭いが、やれるだけの事はやろう。


「ああ、メンドクセェ……」


俺は小さくため息をつき、佐藤の後を追いかけるのだった。

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