第十四話 ファーストコンタクト④

「Gg!」


「Gyyyyyyy!!」


「Gyaaaaa!」


 と、襲いかかってくるのは五匹のゴブリン。

 けれど、その全てがオズには止まって見える。


(戦えなくなったとは言え、動体視力や身体能力が下がったわけじゃない!)


 考えたのち。

 オズは先頭のゴブリン二匹を、枝を使って叩き落とす。


「g!?」


「Gya!?」


 と、地面に叩きつけられるゴブリン。

 オズはそれを見たのち、残り三体目がけ木の枝を振るう。


 剣の型など関係ない。

 力任せに、かつ枝が折れぬように叩きつける。

 結果。


「す、すごい……すごいです!」


 と、聞こえてくるのは少女の声。

 彼女がそんなことを言った理由はわかる。


 現在、オズの目の前ではゴブリン五匹が地面に倒れ伏しているからだ。


(本当に倒せた、のか?)


 けれど、ゴブリン達が動く気配はない。

 おかしい。


(スキル『不殺』の効果で、俺は敵の撃破はできないはず。まさか『不殺』は『腹パン』と違って、効果の発動を自由に選べるスキルだったのか?)


 なんにせよ、今はさっさとこの場を去るのが先決だ。


 オズはそんなことを考えたのち、少女の方へと振り返る。

 そして、彼はそんな彼女へと——。


「う、後ろです!」


 と、オズよりも先に言ってくる少女。

 オズはすぐさま背後へと振り返ろうとする……が。


 チクッ。

 チクチクッ。


 と、何かが脇腹に刺さる感覚。

 それでもオズが後ろへ振り返ると、見えてきたのは吹き矢を構えたゴブリンが三匹。

 そして、残り二匹は——。


「GyaGya!」


「GyGi!」


 と、真上から飛びかかってくるゴブリン。

 オズはすぐさまかわそうとするが。


(っ……あの吹き矢、やっぱり毒か! 身体の動きが悪い!)


 とても間に合わない。

 オズは左手をかざし、それを盾にする形で棍棒を防ぐ。


 それによって一匹のゴブリンの棍棒を防ぐことに成功する。

 だがしかし、もう片方のゴブリンの棍棒は——。


 ドガッ!


 と、オズの頭部に直撃する。

 同時、遅いくる凄まじい衝撃。


「い、いやぁあああああああああっ!!」


 と、聞こえてくる少女の悲鳴。

 殴られたことで。まともに思考ができない。

 けれど、少女を心配させてしまったことはわかる。


「Gya! Gya!」


「Gi! GiGi!!」


 と、こちらもまた聞こえてくるゴブリンの声。

 きっとさぞ嬉しいに違いない。

 なんせ、新鮮な男女二人の肉が手に入るのだから。


(くっ、そ……なに考えてんだ俺は! あきらめ、るな。頭を、働かせ、ろ……っ)


 けれど、殴られた衝撃で思考がまとまらない。

 思いついても妙なことばかりが湧いてくる。

 例えばそう。


(スキル『腹パン』ってこれ、仲間に——人間に使ったらどうなるんだ?)

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