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子どもの頃の夏休み──夏合宿で彼らは出会った。
森の中で、一緒に暮らして笑って──そしてもう会えない仲間がいる。
「はじめまして──」
ひとりの少女がはにかみながらも
彼女の名は
その後から「よろしく」と、少しだけぶっきらぼうな挨拶をする──一見、少年のようにも見える──ボーイッシュな少女。キリっと整った顔に似合う、とても強い
彼女の名は
彼女たちともうひとりの少年、それが透をリーダーとした「チーム」だ。他に四人で計八人の「組」になる。
もうひとりの少年……透に比べたらもちろん、女子たちと比べても細く
「俺は藤家透、よろしく。残りの四人も
俯いている少年──夕月空の手を取って、透は「組」の時の他四人にも紹介した。
ちょっと自己中心的だけど、根は単純な
最初からみんなが仲良くできたワケじゃない。
だけど遊びでも勉強でも野外活動でも色んなことを一緒にやって、だんだんお
透はみんなから「リーダー」と呼ばれていた──。
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ようこそ、フォレストへ!
フォレスト
※掲示板、並びにチャットルームはご自由にお使い下さい。
管理者・夕月 空
二十一時。
夕食後、透は再びパソコンの前に向かっていた。
パソコンは大学の入学祝に買ってもらって以来、大事に使い続けている。これからの時代、パソコンの基本的な使い方ができた方がどんな仕事でも役に立つという理由からだ。
ネットの
ただパソコン自体に
掲示板には参加者へのお知らせがリアルタイムで更新され、チャットルームには何人か集まっているようだった。会話をしているのが五人、透ともう一人がROM(会話に参加せず、読むだけのこと)で見学。少なくともこの掲示板やチャットルームには透の他にもROMがいて、合わせて七人いる。
この招待状が送られてきたのがあの時の子ども夏合宿仲間だとしたら、
(もしかして『彼女』もこのチャットに参加しているのか?)
透はまずROMで様子を見ながら、参加者の様子をうかがうことにした。
あの子ども夏合宿の仲間なら半分ぐらいの名前と顔ぐらいはおぼろげながら覚えているし、もし一致しなければあの頃の写真でも持ち出せば……。
(写真は──ダメだ……)
透は自分の思考を停止させる。あの頃を思い出したくないから、写真を捨てようとして──でも結局は捨てられなくて、物置の
全て忘れてしまいたかった。楽しかったことも、幸せだったこともたくさんあったけれど、それ以上に二度と記憶の扉が開かないように願っている。
あの夏の日全てを
けれど完全に思い込むことができず、結局
(今になってどうして──)
もう一度あの夏に向き合うことができるのか?
不安になる。込み上げてくる息苦しさと、不安が冷たい水のように身体を冷やしていく。
あの時から人と
どうすることもできず、また
(また逃げ出すのか……? また何も言わずに消えるのか?)
心臓の
開かれたウィンドウはまるで森をイメージしたような
現在会話に参加しているメンバーの名前が表示されていた。
《REI》《るる》《DR》《お馬さん@ナイトBバロン装備中》《bleu》の五名。他、ROMは透を含めて先に来ていた一名と合わせて二名になった。
パスワードが設定されたSNSであるのに、本名ではなく、全員がハンドルネームで書き込みをしている。誰が誰だか、特定できるのだろうか?
もしかして、と思う名前があって少しだけログをさかのぼって、名前のヒントがないか見てみる。すると……。
REI『やだ、アタシだけ簡単な名前にしちゃったじゃない。あの時のメンバーだけなんだから、ややこしい名前とかしなくてもいいじゃん』
るる『後でTwitterに
REI『そうだよ。他のみんなも名乗ってよ。アタシだけバレるの嫌じゃない』
DR『いいじゃん、当日までこのまんまの方が。
お馬さん@ナイトBバロン装備中『カードについてしゃべっちゃダメなんだよね? とりあえずオレは馬場だよ。覚えている? オレもわかりやすい名前だと思ったけど。あ、このハンドルネームはMMOの『ブラック&ホワイト創世記』のアバターから。もしプレイしている人がいたら友だちリクエストで招待するからヨロ! オレはブラック
DR『お前は馬場一樹かよ。でもって松井か。さっきからずっとROMっている
るる『そういう言い方するのって、達也くんじゃないの? →DR』
DR『どうだろねw』
bleu『みんなはゲームに参加するの?』
DR『だってこんなチャンス、ないと思うけど。本当は今年じいちゃんの
REI『そうだね、参加するだけで十万でしょ? 滞在費、交通費全部持ってくれるし。何か凄くない?』
お馬さん@ナイトBバロン装備中『今ちょっと話題の会社みたいだから、スポンサー力
DR『そうだろ? だってそれ以外に夕月と連絡取っていた奴いる? 少なくともオレは十年ぶりに連絡来てびっくりしたもん。でも覚えていてくれて
──嬉しかった──
その言葉を見た
(バカだ……)
今さらながら、透は急に退席したことを後悔した。だけど、あの夏の時のことを覚えていることが
また逃げ出している。
PCのモニターには、相変わらず森のようなグリーンが広がっていた。空が自分たちを集めてゲームをしたい、そう思っているのは懐かしさからだけなのか。
あの時のことをまた話したいと思っているのか……。
《REI》、《るる》、《DR》……チャットにいたメンバーの名前を
ハンドルネームは《bleu》。
(あれ……《bleu》って、ブルー……青? 空じゃなくて青だとしたら──)
どことなく
あの時から透と彼女は距離を置いてしまったけれど、自分と同じようにあの夏のことを
都合の良い話かもしれないが、彼女が《ブルー》という名にまだ大切な想いを持っていてくれるのではないか。
今日、透が見かけた彼女は桜色のワンピース姿だった。外見は昔とはずいぶん違っていても、彼女があの時のままの〝ブルー〟ならば、きっとこの会に対して自分と同じぐらい
(明日、彼女と話をしてみよう)
実際に会って話をすればもっと冷静でいられるのではないか。
入学当初から同じ大学だったのは驚いたけれど、学部が同じだから、
透はそれを自ら
大きく
その時、ふととあるモノが目に入った。
PCの近くに置いてあったプリンター用の青インクには「BLUE」という文字が書かれていた。そこであのハンドルネームにあった違和感に気づく。
《blue》ではなく《bleu》。
「
ハンドルネームを見た時の違和感の正体を知って、何となく透は気が
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