第48話 皆が心配して来てくれました

午後からは、リリアやミリアナ、ジャック様とジン様も来てくれた。


「マリア、やっと意識が戻ったのね。お父様からマリアがクラシエ様に毒を盛られたと聞いて、本当に心配したのよ」


「本当よ。ごめんね、あの日私たちが一緒に図書館に行っていれば、こんな事にはならなかったのに」


泣きながら私に抱き着くリリアとミリアナ。


「あなた達のせいじゃないわ。心配かけてごめんね。でも、もう大丈夫よ。明日からは、貴族学院にも行くつもりだし」


「そう、それは良かったわ」


さらに2人が抱きしめてくれた。こうやって私の事を心配して家まで見に来てくれるなんて…ありがとう、2人とも…


「それにしても、あの男爵令嬢、本当に恐ろしい女だったな。マリアちゃんとあの女の会話を聞いた時、背筋が凍り付いたよ」


「本当にな。まるで魔女みたいだったな。あんなにもためらいなく毒を飲ませ、苦しむマリアちゃんをさっさと小屋に放り込んで放置するんだもんな。本当に恐ろしい女だ」


「お父様も同じことを言っていたわ。あんなにも恐ろしい事を、ためらいもなく出来る令嬢が貴族学院に通っていたなんて、考えただけで恐ろしいって」


「家のお父様もよ。それに被害者はマリアでしょう。相当怒っていたわ。でも、もうあの女はこの世にいないから、心配いらないわよ」


そういえば、マリア様は処刑されたと聞いた。侯爵令嬢の私に手を出したのだから、当然と言えば当然だろう。でも、なぜこんな酷い事をしたのか、それに、私を閉じ込めるときに“1度目の生”って言ったのよね。もしかして、彼女も一度目の生の時の記憶があるのかしら?その件についても、色々聞きたかったのだけれど…


考えても仕方がない。それに私を毒殺しようとしたのだ。許してやれと言われても許せない。あの時の事を考えただけで、恐怖で震えるのだから…


「とにかく、色々と話しがしたいわ。そうそう、クラスの皆もね、あなたの事をすごく心配しているのよ。本当は皆様子を見に来たかったのだけれど、大勢で押しかけたら迷惑でしょう?だから、私たちが代表できたの」


「まあ、クラスの皆にも随分と心配をかけたのね」


「当たり前だろう、マリアちゃんは、俺たちの大切な友達なんだから。早く元気な顔を見せてやってくれ。皆喜ぶだろうから」


「ありがとう。私も早く貴族学院に行きたいわ。早く明日にならないかしら…」



その後、6人でお茶を楽しんだ。


「さあ、そろそろ帰るか。マリアちゃんの元気そうな顔も見られたしな」


「そうね、マリア、また明日、貴族学院で会いましょう」


「ええ、明日を楽しみにしているわ」


ライアンと一緒に、4人を見送る。こうやって私を心配して様子を見に来てくれる友達。本当に有難い存在だ。


4人を見送った後、ライアンも一緒に夕食を食べた。相変わらず私の世話を焼くライアンにお母様が


「ヴァンが言っていた通り、本当に夫婦みたいよ。あなた達」


何て言うものだから、再び頬を赤らめた。それなのにライアンったら、お構いなしで私の世話を焼くのだから、恥ずかしいったらありゃしない。


食後お茶を楽しんだ後、家に帰るライアンを見送る。


「マリア、俺も帰るけれど、いいか。絶対にネックレスを肌身離さず持っているんだぞ。わかったな」


「ええ、分かっているわよ。でも、このネックレス、会話が聞こえるのよね。さすがにそれは…」


「大丈夫だ。このネックレスは一旦外して、機械に取り付けないと聞けない様になっているから、そう簡単に聞く事は出来ない」


「あら、そうなのね。それなら良かったわ」


「何だお前、聞かれて困る話でもしているのか?」


「別にそういう意味じゃないわよ。ほら、早く帰らないと」


「ああ、そうだな。明日は朝迎えに来るからな。わかったな」


「ええ、分かったわ。それじゃあ、また明日ね」


「ああ、明日」


ライアンが馬車に乗り込むのを見送り、自室に戻ってきた。


「今日は疲れたわ、リラ、湯あみをお願い」


近くに控えていたリラに話しかけるが、なぜか動かない。一体どうしたのかしら?そう思っていると、急に抱き着いて来た。


「お嬢様、お目覚めになってくださり、本当によかったです。お嬢様が運ばれてきた時、生きた心地がしませんでした…どうか二度と、あの様な目には合わないでください。私の心臓が持ちません」


あの様な目に合わないで下さいと言われても…

でも、きっとリラは物凄く心配してくれたのだろう。


「ありがとうリラ、それから、心配かけてごめんね。もうあなたを心配させるようなことはしないわ。だから、湯あみを手伝ってくれるかしら?」


「はい、もちろんです」


今回の事件で、たくさんの人に心配を掛けてしまった。つい1年前まで、誰にも相手にされず孤独だった私が…


そう思うと、なんだか胸の奥が温かいもので包まれた。皆、ありがとう、これからもよろしくね。心の中で、そっと呟いたのであった。

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