第44話 ぐぉぉぉ古傷が疼くんじゃ~!!

 少しメタ的な話になるが。


 ストーリー上、初となる本格的な異界域攻略においてゲームシステムにもまだ慣れていないプレイヤーに過度なストレスを与えない為の配慮なのか。


 スミマル第二の攻略メンバーであり、主人公…立花アイカのパーティーメンバーとして同行してくれる先輩マスターの二人はどちらもギミック対策スキルを使えるセインを最初から召喚出来るようになっていた。


 マイさんと契約したセイン、ディンキーは地面から少し浮かび上がることでダメージ床などを無効化しながら移動できる”浮遊”というスキルを使用することが出来る。


 浮遊はミツル先輩と契約しているブラウの”飛行”のように、ビルなどの高い建造物を無視できるほど高く飛ぶことは出来ないがそのぶん魔力の消費が少ないのが特徴である。


(そう考えると…アイカの方について行ったのがミツル先輩で良かったな)


 沈んで行ったビルから上に戻ってくる方法は幾つかあるのだが、飛行を使えば大幅に移動時間を短縮することが出来る。


「戦闘に備えて魔力の消費は出来るだけ抑えておきたいから…。 エデンさん、悪いけどそのままミサキさんとティアちゃんを抱えて移動してくれるかしら? 」


「■■ゥゥ」


(任せろ) 


「えっ!? 私たちはこのまま行くんですか!? 」


「ええ。 消費した魔力は手持ちのアイテムで補う事も出来るけど…。 獅子柄班のメンバーと合流した際に回復魔法が沢山必要になる可能性もあるから、なるべく使う魔力を節約しておきたいの」


「うう…そういうことなら…。 恥ずかしいけど、了解です」


「あぅう~♪ 」


「それじゃあディンキーちゃん、私に浮遊を掛けてちょうだいね? 」


「はい、なのです。 ぷぷいぷいぷい…」


「すごい! やっぱりそうやって魔法を使うんだ…! 」


 呪文のような言葉を唱え始めたディンキーにミサキが目を輝かせているが。


(いや、たぶんあれは…)


「はっ! うわーっ!!!! やってしまったのです! 今のは忘れて下さいなのですぅ~!! 」


「わっ! ど、どうしたの…? 」


「ふふふっ、この子が使う浮遊にはね。 べつに特別な呪文は必要ないのよ。 これは…たんなる趣味? みたいなもので…」


「わー! わー! やめるです! この、このっ! 」


 顔を真っ赤にしてマイさんの肩をポカポカと叩いているディンキーを見ていると、ぼんやりと昔の記憶が蘇り何だか俺まで少し恥ずかしい気持ちになってきた。


(転生した直後は、俺も無駄に技の名前とか叫びながら魔界で悪魔と戦ってたんだよな…)


 それも自分で考えたオリジナルの技名をだ。


(今考えるとダークネスエンド・アルティメットスーパー斬りはないわ…。 ってか、そこまでいったら全部カタカナで統一しろよ! )


 過去の自分に文句をいいつつ、俺は羞恥心から悶えるディンキーに同情の視線を送るのだった。

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