第42話 思わぬアイデア

(予想外…いや、ある意味予想通りか)


 最川ミツルおよび原作主人公である立花アイカがギミックにより離脱。


 セカンドチームのメンバーたちはたった今、分断されてしまった。


 つまり、さっそく俺が知らない未来…原作には無かった展開が訪れたことになる。


(とはいえ…アイカが巻き込まれたあのギミックについての知識はある)


 あれは単純にマスターたちを分断し、その先で天使や悪魔をけしかけ戦力を削ぐことを目的としている。


 アイカが一人で巻き込まれたならともかく、ああしてミツル先輩が同行したのであれば死ぬような事態にはならない筈だ。


「あぅあ~♪ 」


「■■、■ゥゥ」


(おっと、すまん。 今降ろす)


 ビルからビルへと急いで飛び移る際に抱えたままだったティアを地面に降ろし、マイさんとミサキの話が終わるまでの間周囲を観察しておく。


「……」


(やはり、俺にはどこに”ハズレの床”があるのか分からないな)


 セインやデモンの中には近くにあるギミックを探知し、マスターに伝えることのできるスキルを持つものもいる。


(獅子柄班の班長である、獅子柄アミのデモン。 ジャックなんかはそういうスキルを持っていた筈だ)


 しかし、戦闘特化型のデモンである俺はギミックを探知出来るようなスキルは所持していない。


 その代わりといっては何だが、俺自身は身に纏うこの鎧に由来するパッシブスキル”不滅の黒魔鎧くろまがい”の効果であらゆるギミックの影響を受けない。


 つまり、俺に限った話であれば毒沼や溶岩といったダメージ系ギミックすら無効化出来てしまうので探索の道中で体力を削られてしまうような心配もないのだが…。


(このスミマル第二のビル群には、アイカが踏んだハズレ床のようにマスターに直接働きかけてくるタイプのギミックがそこかしこにある…)


 ハズレ床はマスターの拘束と、分断ギミックの起動スイッチという二つの役割を担っており。


 ハズレ床を踏み、ギミックを起動させた者の足を縛り拘束することで沈んでいくビルから逃げられないようにして、確実にこちらの戦力を分断する仕組みになっているのだ。


(とはいえ、俺がいくらギミックについて知っていてもマスターとその情報を共有できないんじゃ意味がないんだよな…)


 スミマル第二に突入する際、ダメもとでミサキたちに異界域のギミックについて話そうとしたのだが…案の定それは失敗に終わったのだ。


(くそっ、もどかしいぜ…)


「う~う…あぅあぅ」


「■■ゥ? 」


(お…? ティア、どうかしたか? )


 何かを俺に伝えたいのか。


 ティアは足元まで近寄ってくると、こちらを見上げたまま両手をぱっと広げてみせた。


「あっお! あっお!」


「■■ゥゥ…? 」


「ふふっ…ティアちゃんたら。 さっきの移動で、すっかりエデンさんに抱っこされるのが気に入っちゃったみたいね」


「■ゥ? 」


(ん…? )


 抱っこされる…。


「■■ゥ…! ■■ゥゥ! 」


(そうか! これだ! )


 俺はギミックの影響を受けない。


 なら、俺がマスターであるミサキを抱えた状態で移動すればハズレ床を踏んでも大丈夫なんじゃないか!?

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