(NEW)第26話 運命の王子様

 終始笑顔だったにも関わらず物凄い圧を感じたミサキとのお話し尋問を乗り越え、どうにか無事に次の日の朝を迎えることが出来た。


(朝日が眩しいぜ…はは…)


 俺だって本当は分かってたんだ…物に釣られちゃダメだってさ…。


「あらっ? おはよう、エデン。 偶然ねっ! こんなところで会うなんてっ」


「■■ゥゥ…」


(いや偶然もなにも、ここ…俺のハウスの前なんだが…)


 何故こんな朝っぱらからリリーナがいるんだ…?


「偶然よ偶然っ! それより、もう朝ご飯は食べたかしら? まだよねっ? そうよねっ!? 」


「■■ゥゥ…」


(お、おう…まだだゾ)


「それはよかったわ! ちょうど私、お弁当を作ってきたのよっ。 一緒に食べましょうっ! 昨日お昼を奢ってもらったお礼だから遠慮しないでっ、ねっ、ねっ」


(偶然ここに来たって話はどこいったんだよおぃぃ! )


 リリーナの辻褄ガバ過ぎる話にすかさずツッコミを入れつつ。


 突然の訪問とはいえ、わざわざお弁当を作ってきてくれた彼女の誘いを断るのも悪いしな……などと思っていると。


 俺とリリーナの間に突如黒い影が割って入った。


「こら~!! そこの金髪おんにゃ~!! こんなところでにゃにしてるにゃ~!! 」


「■■…■■ゥ」


(おっ、メアリー。 おはようさん)


「エデン、おはようなのにゃ! 」


「ちょ、ちょっとぉ! いきなり出て来てなんなのよ貴女っ! 」


「ふんっ。 いきなりもお稲荷も無いのにゃ! 新米のアイカたちにやられた負け犬女はさっさとどっかいけにゃ! 」


「なんですてぇ~っ!! あっ…。 さては貴女、私に一撃で倒されたことを根に持ってるんでしょぉ~? それに、私はアンタやそのマスターたちに負けたんじゃなくて、将来私のダーリンになるエデンに負けたのよっ! 」


「■■ゥ? 」


(ゑ? )


「私、この身体を何度も彼に貫かれているときに確信したのっ♡ あぁ…♡ 彼が私の旦那様…運命の王子様なんだってっ♡ 」


「うにゃぁ…。 にゃんだか気味が悪い妄想を吐き出し始めたのにゃ…! しっしっ、そうゆうのは他所でやるにゃ」


「さっきから聞いてれば、なんなのよ貴女っ! 私とダーリンの朝の一時を邪魔しないでくれるかしらっ」


「にゃにが朝の一時にゃ! エデンは狂獣属性があって会話が難しい事が多いから、買い物する時とかは、あにゃしがよく一緒についていってあげてるのにゃ! きっと今日もあにゃしと朝ご飯を買いにいくにゃっ、邪魔なのはアンタのほうにゃっ! 」


「残念でした~今朝は私がお弁当を作ってきたんですぅ~。 泥棒猫は大人しく自分のお家に帰りなさいなっ」


「だれが泥棒猫にゃっ! この妄想女っ! 」


「言ったわね…このっ! 」


「うにゃー!! 」


「△!@×ぅ!! 」


「@#!にゃ~!! 」


 ムキー!!


 フシャー!!


 ……。


 …。


 もとが天使と悪魔故に、そりが合わないのか。


 激しい口論を繰り広げているリリーナとメアリ-の大声を聞いて、お向かいに住んでいるティアも起こされてしまったようで。


 まだ眠そうに頭を上下に揺らしながら、うにょうにょと此方に近づいてきた。


「ううぁ~?? 」


 リリーナがメアリーと言い合いを続ける最中、地面に仮置きしたバケット。


 恐らく中には彼女が作ってきたお弁当が入っているであろうソレを見つめるティアの心境は、こんなところに御馳走が置いてあるっ! ラッキー! といった感じだろうか。


「あぅあ~う~♪ 」


 案の定。


 バケットを両手で抱えると、ティアはそのまま俺の足元まで移動してきた。


「うぅあ? 」


「■■…? 」


(食べようっていってるのか? )


「あぅあぅ」


「■……」


(そうだなぁ…)


 ブニャー!!


 ギャース!!


「■、■■ゥ…■■! 」


(ま、仕方ないか…食っちまおうぜっ! )






「あぅあ~……はぅっ! はぅはぅ…。 あぅ~♡ 」


「■■ゥゥ…」


(ん…。 うまいな、このサンドウィッチ)


「うまぁぅ~♪ 」


「■■ゥゥ」


(あとでリリーナには、二人でお弁当のお礼を言わないとな)


「あうあぅっ! 」

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