(NEW)第20話 私の騎士にしてあげる☆
デモンであるエデンとの相性を考えて、支給品でもらえる石をデモンストーンに決めた私の元へ二体目の仲間がやってきてくれた。
召喚ランクF、スライム属性デモンのティアだ。
最川先輩いわく、スライム属性の子たちは液状化ってスキルをはじめから使えるみたいなんだけど。
それを知らなかった私は、召喚に失敗しちゃって床から水が湧いてきちゃった!? って最初は焦っちゃったんだ。
「今日の訓練、頑張ろうね! ティア」
「あぅあ~!! 」
小さな拳を突き上げ、気合十分なティア。
液状化していないティアは小さな女の子みたいな姿で、正直こんな可愛い子に戦わせるなんて…って思っちゃうけど、どんなに小さくて可愛くてもティアは立派なデモンなのだ。
それに、私が未熟なうちはファーストデモンのエデンには召喚力の問題でここぞという時にしか頼れないからちゃんとティアと一緒に戦えるようになっておかないとね!
「午前中は私と日野さん、マイと立花さんで。 午後はペアを入れ替えて戦闘訓練を行うわ」
「今日は私たちと一緒に、訓練に協力してくれるデモンやセインと戦いながら戦闘に必要な知識やテクニックを学んでいきましょうね」
「うう……訓練って分かっててもやっぱり緊張する……」
「アイカにはわにゃしがついてるから心配むよーだにゃ! 」
「ああそれとね。 昨日も話した通り、ミサキさんのデモンであるエデンさんは今の段階だと実戦で長時間召喚することは出来ないから。 今日は、一日の締めに行う”最終訓練のみ”彼を召喚してもらうことになるの」
「最終訓練では私とマイが抜けて、日野さん立花さんだけで強力なセインと戦うことになる」
「”彼女”を相手にして、全滅せず一定時間耐え抜けば二人の勝ちよ。 でも、今日は初日だし実力差も大きいから全滅しちゃっても気にしなくていいわ。 一日のおさらいだと思って、今できる範囲で頑張ってみてね」
「はいっ! 」
「分かりました……! 」
◇◆◇
「■■ゥゥ……」
(お高い……)
ミサキからの連絡で、今日は夕方まで喚び出しがないことが分かったので。
空き家同然、小さな棚と鍋しかないガランガランなマイハウスに何かお洒落な家具でも買って置こうとショッピングに来ていたのだが……。
作りがしっかりしていてデザインも良いような家具は、やはりそれ相応のお値段がつけられており……ゲミカーラを倒した報酬金の残高だけでは到底買えそうになかった……。
「■ゥゥ……! 」
(うぎぎ……今日のところは見るだけで勘弁しといてやるぜ……! )
巨大なボムボムカボチャを模した一人掛けソファーが、誰かに買われてしまわないことを祈りつつ俺は店を後にするのだった。
「ちょっとそこの貴方、待ちなさいっ」
「■■ゥゥ? 」
結局、昼飯だけ買って自宅に戻ると。
家の陰から、純白の翼を背中に生やしたセインと思しき金髪の女が現れた。
「やっと帰ってきたわねっ。 朝、家から出てきた貴方に声をかけそびれてから……私はここで、ずっと貴方が帰って来るのを待っていたのよ! この私をこれだけ待たせて、悪いと思わないのっ」
「■、■■ゥゥ……」
(す、すまん……)
話の内容的に、俺は一ミリも悪くないと思うのだが……下手に反論するとめんどくさそうな相手なので適当に謝っておく。
「ふんっ、まあいいわよ。 私は寛大な心の持ち主だからねっ」
「■■、■■■……」
(んじゃ、俺はここで……)
何だかわからんが、相手も納得してくれたみたいなのでよしとしよう。
「ちょ、ちょっと! 何帰ろうとしてるのよっ! 私の話はこれからでしょっ! ちゃんと聞きなさいよっ」
俺が買い物袋からカギを取り出し、家に入ろうとすると金髪女が慌てて前に割り込んできた。
「き、聞きなさいよっ! 私の話っ……ききなさい……よ。 うっ……うう……」
「■■ー!! 」
(はい聞きますー!! 聞きますから、俺ん家の前で泣かないでくれー!! )
こんな所で泣かれては、女の子を泣かした最低男としてご近所さんからの評判が急降下してしまう。
「な、泣いてなんかないわっ……。 目に流れ星が当たっただけっ! 」
「■■、■……! 」
(いや、それは大惨事だろ……! )
というかこの感じ……この金髪女、俺の言葉を理解できてるな……。
「ふんっ、まったく……。 やっと本題に入れるわねっ。 貴方……日野ミサキと契約してるデモンのエデンよね? 」
「■、■ゥ……」
(お、おう……)
ちゃんと家の表札にも書いてあるしな!
「実は私、今日の夕方貴方のマスターと戦う事になっているの。 訓練の一環だけどねっ」
「■■……? 」
(ほう……? )
「休暇中だった私の貴重な時間を割いて、新人マスターの訓練相手をやらされるなんてほんと最悪っ! どうせ私が一瞬で勝つのにっ。 だから貴方、私の休日を奪った貴方のマスターの代わりに。 私の言う事を一つ聞きなさいよっ」
「■ゥ……? 」
(へっ……? )
「あっ、でも、マスターの代わりとはいえ、流石にただ言う事を聞かせるっていうのも可哀想かしら……。 じゃあ、貴方にもチャンスをあげるわっ。 もしも、夕方の訓練で貴方たちが私に勝てたら、逆に私が一つ言う事を聞いてあげる」
「■■……? 」
(なに……? )
「ふふっ、その代わり。 負けたら貴方には私の
正直、マスターと契約しているデモンの俺がどうやって彼女の騎士になるんだとか。
そもそも休暇中に訓練相手をやらされることになった原因は学園側にあるだろうし、俺もマスターであるミサキも悪くないだとか。
いろいろと思うところはあったが、勝てば一つだけ言う事を聞いてもらえるという条件はたしかに魅力的だった。
(訓練で勝ちさえすれば、ボムボムカボチャのソファーを買ってもらえるってことじゃん……! )
二次元キャラが三次元、つまり現実のものとして存在している関係上人型の相手はどのキャラなのか判断し辛く。
彼女が何のセインなのか、見ただけでは分からないが。
訓練で戦う相手が単独なら、レベル差が大きく開いていても勝機はある。
「……」
「頷いたってことは、この話にのるってことよね? 」
「■■……! 」
(ああ……! )
ボムボムカボチャ! ボムボムカボチャ!
「やった! それじゃあ、決まりねっ。 私はリリーナ。 貴方、今日の夜には私に仕えることになるんだから。 偉大で可憐なこの名前をちゃんと覚えておきなさいよねっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。