第13話 最終確認
「これで一通り、校舎内の施設は案内できたかしら」
「こうしてみると、この学校。 すっごく広いんですね」
「うん…。 でも、そのわりには…なんだか人が少ない気もするね? 」
「そうね。 この新東都女学園は、学校という
「それにね、この学園がある冬葉原の地下エリア全体がマスターではない人間は立ち入れないようになっているから。 出入りする人の数がそもそも少ないのよ。 そのせいで、校内の清掃や食堂、売店なんかも一般の業者さんには頼めないのよね」
「えっ…ここ冬葉原なんですか? 」
「それに、地下って…」
人気アパレルショップが集まりオシャレさんには馴染み深い街である春葉原と並び、ゲームやレトロデバイス好きにはたまらない場所として新東都のなかでも有名なスポットである冬葉原。
お父さんがゲーム好きなこともあって、冬葉原には小さい頃から何度も連れてきてもらったことがあったけど地下エリアがあったなんて一度も聞いたことがなかった。
「あっ、でも。 今日の朝起きた時、窓の外を見たら太陽が昇ってましたよ? 」
「うん…。 今も外は明るいよね…? 」
「ああ、あれは地下で暮らす私たちの健康を考えてセインが創り出した太陽擬きよ」
「太陽擬き!? 」
「そ、そんなことまで出来るんだ…」
「ふふっ、そうね。 貴女たちはまだ、知らないことがたくさんあると思うけど。 マスターとして正式に登録されたら、私とマイが基礎の部分から教えてあげるから安心しなさい」
「登録が終わって、学生マスターになったら。 ミサキさんとアイカさんにはマスターとして簡単な任務をこなしてもらいながら…私とミツルちゃんが教育係として空いた時間に色々なことを教えていくことになるの」
「その…任務って、具体的にはどんなことをやるんですか? 」
「学生のうちは、異界域の探索および攻略が主になるわね」
「ええ、過酷な仕事は…先輩方が肩代わりしてくれるから」
「でも。 その仕事内容は、今のうちに二人には知っておいてもらう必要があるの」
「……そう、ね」
まだ付き合いは浅いけど、普段からハッキリと物事をいうタイプの最川先輩が珍しく目を伏せて言い淀んだ。
「…………。 マスターとして戦うのなら。 いつか、同じ人間と戦う。 いえ、殺し合う時もくるということを覚悟しておかなければならない」
「……」
「それって、昨日話してくれた……天使や悪魔に体を奪われた人ってことですか? 」
「いいえ。 残念だけど…れっきとした人間よ。 それも同業者」
「そんな…っ」
「私たちマスターの中には、自分たちの私利私欲で力を使う。 そんな人たちもいるってことを、どうか覚えておいて」
マスターの中には、その力を悪用して世の中を乱そうとする人たちもいる
私は心のどこかで、マスターは人々のために天使や悪魔と戦う正義の味方のように考えていたからそのぶん衝撃も大きかった。
「これは、最終確認よ。 ……今の話を聞いてもまだ、貴女たちはマスターとして戦う気があるかしら? 」
言葉を失っていた私たちに、最川先輩が問いかける。
その手で、人を殺す覚悟はあるのかと。
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