第17話魔法の実技

 いよいよ魔法の実技が始まった訳だが、どうなる事やら。


 いつもの如く目立ちたがり屋のヴァーグナーが1番手だ、特攻隊長とも言えるかも?


「侵略する火のごとく燃やせ!ファイアアロー!」

「静かなる水が時に見せる激しさ!ウォーターバレット!」

「速きこと比類なき風の刃よ切り刻め!エアカッター!」

「動かざる山のごとく捕らえよ!アースプリズン!」

「聖なる加護!あらっ?」


 神聖魔法以外の四大精霊の初級魔法はクリア、まあこんなもんだろう。


 次にモモとグリンだが、中級魔法まで難なく使いこせていた、モモに至っては僅かだが上級魔法も使えるようだ。


「あら〜私はこんなものかしら〜」


「おや〜さすがのボクでもモモには敵わないかな〜」


 そしてロッテ、勉強家だけあって初級魔法はすべてクリア、中級魔法はまだ難しいようだ。


「う〜んまだまだだなぁもっと勉強しなくちゃ」


 クリスの番が来たが、何故か上級の神聖魔法だけ使えるという結果に……どういうことだろう?


「まほ〜難しい……」


 いよいよ僕の番、だけど四大精霊魔法も神聖魔法もまったく使えなかった、やはり暗黒魔法じゃないとダメなのだろうか?


 魔法の教師に聞いたところ、この学園内にある実技場は強力な結界が張ってあり、例え王都が全壊するほどの魔法でも壊れないだろうとの事、やってみるか。


 悪魔が魔法を使うように、魔法を使おうという意思、その意志を強く込めて以前使った魔法を試してみる。


「燃やし尽くせ!」


 ……あれっ


「燃やし尽くせ!!」


 何故?Why?魔法が使えなくなっている!


 教師によると僕の中から強大な魔力は感じるのだが、扱い方を解っていないのだろうと。

 暗黒魔法を教えてもらえないだろうかとの問いには。


「聖神教の信者が大多数を占めるヴォルフガング王国で、暗黒魔法などとんでもない!」


 と、言われてしまった。


 こうして初めての魔法の実技は不完全燃焼のまま終わった。


 この世界に来てから僕の初めての挫折、どうしたものかと授業が終わってからも1人教室に残り考えていた、このままでは僕は人より少し運動が出来るだけの存在になってしまう、異世界で無双なんて夢のまた夢である。


「ファースト君、大丈夫?今少しいいかな」


「ロッテ、ロッテもまだ残ってたんですね」


「うん、ファースト君のことが気になってね」


「ありがとうございます正直かなり凹んでます、こんな時に来てくれるなんてさすがロッテですね」


「ふふっ誰も居ないから言っちゃうけど、私はファースト君だけのロッテだからね」


「嬉しいなぁ僕もロッテだけの……ではないですけどロッテの不破明日斗ですよ」


「そうだねファースト君にはリタさんやクリスが居るもんね、ねぇ?どうしたら私だけのファースト君になってくれる?」


「誰か1人なんて選べませんよ、パパとママどちらか1人を選べって言われてるようなもので……」


「そっそうだよね、そんなことより今はファースト君を元気づける事が私の役目な気がする、どうしたら元気になるかなぁ例えば……また私の裸を見たら元気なったりはしないかな」


 ロッテが制服のボタンに手をかける……


「ストップ!ストップ!そりゃあ、ある意味元気にはなるでしょうがロッテとはもっとこう……精神的繋がりというのかプラトニックな関係で居たいと思うのです」


「そうだった、私とファースト君はお互いを高め合う、精神的繋がりを大事にしてるのは暗黙の了解だったね、じゃあ今、私に出来そうなことは他にないかな、ゴメン先に帰るね」


 去り際にロッテが何か呟いたような気がした。


「ファースト君のいくじなし……」


 翌朝、学校に来てみると例の花が飾られていなかった、ロッテが毎朝花瓶に活けている花が、誰にも気付かれていないと思っているのは本人だけで、みんなロッテが持ってきて飾っていることは知っているあの花が。


 何か悪い予感がした。

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