第9話
ぐったりした姫を抱いて部屋に入っていった。
ちょっと待ってください。
まさか婚約もせずに手を出したりしませんよね。
今度は若の入った部屋の隣室に移動して聞き耳を立てた。
「いやーーー!」
絹をさくような悲鳴が!
「薬を塗るだけだ。こんなに赤くなってたら痛いだろ」
若の宥める声が聞こえてきた。
「痛々しくて見ていられない。嫌がる事は絶対にしないから。」
本当ですか?信じてますよ。
「兄様が私の嫌がるような事はしないって知ってる。
大きな声出してごめんなさい。」
ひーめー!
貴女の危機感は6才で止まってるんですか?!
貴女の目の前にいるのは飢えた狼ですよ!
「この薬はよく効くから、手を出して」
「ひゃっ!」
「冷たかったか?」
「ううん。だ、だい、じょぶ·····んんっ」
世間知らずのお嬢様を手篭めにしているようだ。
「ふぁ、んんんー!」
本当に薬塗ってるだけですよね!
こんな所で純潔を奪わないで下さいよ!
「ここでやっちゃったらヤバくない?」
「それ以前に姫が治療してもらってるって思ってるのが問題だと思うけど」
「姫のいいお兄さん像を壊さないといいな。」
そう、そこが大事だ。
信頼関係を壊さないでくださいよ!
「いや、そんな所!」
全員が壁にへばりついた。
「そこも真っ赤じゃないか。」
「でも·····」
「放っておいたら酷くなるだろ。どうしても俺に触られるのが嫌なら仕方ないけど」
若の寂しそうな声に姫の良心が耐えられるか。
「兄様に触られるの嫌じゃない。でも自分でできるから」
「じゃあ、自分で塗って、見てるから」
「どうして見るの!」
姫、声が裏返ってます。確かに意味がわかりませんけど。
「ちゃんと塗れてるか気になるから。綺麗に塗らないとダメだろ」
「ふぇっーー」
何泣かしてんですか!
「泣くな。塗り残しがあって酷くなったら、辛いだろ。
母上達も心配するしな。」
ここで奥様だすの反則ですよ!
「知ってたけど若ってえげつねぇな。」
「まあ辺境守らなきゃなんないんだから、あれぐらい卑怯じゃないと」
「それを今発揮する必要あるか?」
「「「·····」」」
「ユリィ、ここ塗れてない。」
「やぁー!」
「どうした。塗れてない所あったらダメだろ。」
「ふぁ、あぁ、んんっ·····」
「少しだけ我慢してろ。」
「んん·····んぅ!」
姫!抵抗して下さい!
「無理じゃね」
「声でないようになんか噛んでるでしょ」
「抵抗よりも声の方に気がいってるな。」
若は理性をスードに置いてきたんですか?
それからは姫のくぐもった声と若の宥めながら薬を塗って肌を堪能する声が続いた。
これ以上聞いていられない·····。
一線だけは!一線だけは超えないでください!!
「焦らしてるねぇ」
「鬼畜の所業だよ」
「若の性癖全開か」
まだ壁にへばりついている馬鹿達を連れて部屋を出た。
翌朝、情事の後を色濃く残した姫と、浮かれきった若が食堂に現れた。
(若、一線越えてませんよね?!)
(それだけは守った!)
手話での会話を姫にバレないようにしたが、だけってなんだ?
それ以外は全部したって事ですか?服から見える所には鬱血痕が散らばってて昨日より痛々しいんですけどーーー!
食事中、姫と若のイチャイチャぶりに砂を吐きたくなった。
もうサスリファス聖国に行く考えなどないのが唯一の安心材料だ。
だが、これから王都だけでなくスードも荒れるだろう。
王族を放棄しても尊き血が消える訳では無い。
王都の貴族は傀儡を欲して第二王女を、地方貴族は血と姫の能力を求めて争奪戦になる可能性が高い。
姫を守れなければリグスタ王国は内乱か侵略で滅ぶ。
こちらが真剣に先の心配をしているのに、若と姫は食事が終わったらまた部屋に篭った。
純潔ってなんだっけ?
「処女の証があったってもう他に嫁げないっしょ」
「鬱血痕消える暇あんの?」
「若の性癖を受け入れるとは、姫も大概だな」
何はともあれ、幸せそうで良いじゃないか!
「やけくそじゃん。」
やかましいわ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スード編はこれで完結です。
読んで頂きありがとうございますm(*_ _)m
ラストで死ぬ主人公に転生したけど死なないから〜スード編〜【完結】 as @-as-
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