第4話

最近若の元に姫から頻繁に手紙が来る。


以前なら王城から手紙を出すなど殆どしなかった。


誰が勝手に盗み見たりするかわからないからだ。


若は手紙が届いてから部屋から出ずにずっと考え込んでいる。

アラミスの息子が帰国して1年になる。

その息子は何を考えているのか第二王女に手を出している。


馬鹿か?馬鹿なのか?

妹に手を出して無事ですむと思ってるのか?


第二王女も姉の婚約者に何擦り寄ってるんだ。


以前間者から第二王女の世界はお花で埋め尽くされていると報告されたが、間違いではなかった。


宝石姫とか言われてるがお花畑姫の間違いじゃないのか。


どんなに第二王女とアラミスの息子が恋仲になろうと、姫との婚姻はなくならない。


姫は王太女としての立場を確固たるものにしているし、ハスターバルの王位継承者であるアラミスの息子の婚姻は国策だ。


王配になる息子が第二王女を愛妾にできる訳もない。


王家は何考えてるんだ?


そんな事を考えている時に若に呼ばれた。


部屋に入ると辺境伯当主一家、側近もいる。


「まずこれを見てくれ。」


渡されたのは姫からの手紙。

そこにはアラミスの息子と第二王女が恋仲になり国王とアラミスが共謀して姫を婚約者、王太女から降ろし第二王女を据える。

姫には第二王女の婚約者候補だったアイシェバールの三男を婚約者にすると書かれている。


そうなれば国が割れ内乱のおそれがあるから、王族を抜け国外に出たいので協力して欲しいとあった。


誰もが姫の妄想だと思った。


「言っておくが妄想とかじゃねぇ。

俺も初めはそう思ったが王都の貴族や王城に探りを入れたら交代劇の可能性が出てきた。」


「この協力というのは?」


「定例会で茶番が起きるそうだ。悲劇の王女の演技をするからミスした時に助けて欲しいそうだ。」


姫が演技?できたっけ?


「姫は王族やめて国外で生きていけんの?」

「無理ですわ。ユリィ姉様が王族抜けたら城を出た途端、誘拐されますわよ。」

「姫にしちゃ見通しが甘くねえか?」

「ユリィ姫は自分の評価を王城で測ってるのよ。

スードうちにきても阿呆息子が囲いこんで誰も近寄れないし、他でも高嶺の花過ぎて遠巻きにされてるでしょ。」

「視姦されてても自覚できないって幸せなのかな?」

「阿呆兄貴にされてるって知ったら絶望すんじゃね?」


皆様言いたい放題ですね。

全てに頷けますが今はそれどころではありません。


若、落ち込んでる場合ではありません。


「もし本当に王太女交代になればアラミス公爵家とハスターバルにリグスタわが国が蹂躙される。

なんとしても阻止せねばならん。」


旦那様がまともな事を言ってくれたーー

「だからユリィ姫だけが犠牲になれと仰るの?幼い頃から国の為にどれだけ辛い思いをしてきたか!」

「ユリィ姉様しか王族じゃありませんの?そんな国に未来ってありますの?」

「他の王族が好き勝手してチヤホヤされてユリィだけ冷遇されて酷使されてんのに?」

「エリー、ユリィを呼び捨てにするな。」


若、そんなツッコミは今はいりません。

旦那様、家族から責められて涙目にならないで下さい。


「しかし王国にはユリィ姫は必要だ。

アラミスと第二王女が婚姻して王位を継げばハスターバルが絶対に出てくる。」

「じゃあお父様がそう言って国王を止めればいいではないですか。」

「ユリィ姫が国王の決定に異を唱えられると?」

「無理だからこんな手紙を送ってきてんだろ。」

「定例会に出席する貴族にはアラミスが根回しをし始めてるだろうな。

ユリィはハルシュの土砂崩れの対策に時間を取られて、王城に戻ってもたまった政務で忙殺されているそうだ。

国王夫妻とアラミスにユリィが一人でどうやって止められるんだ。」


旦那様、もう無理です。

わたしも姫が一人で太刀打ちできないとわかります。


「国外になんか行かせるかよ。ユリィは俺のものだ!」


せめて若の暴走は止めてください!

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