第2話

それからの若は剣術、戦略戦術に辺境伯当主の仕事に打ち込んだ。


今までもそれなりに勉強していたが、気迫が違っていた。

そして王城に間者を増やした。

出来れば姫の専属侍女や護衛騎士につけたかったが、アラミス公爵の息のかかった者が多く入り込んでいて近づけない。

他の貴族の間者も入り乱れ結果、姫に対し皆静観しなければならなかった。

国王夫妻は水面下の争いなど気づいてはいない。

姫に親しくする者がいなければそれでいいようだ。


王位継承者の姫に擦り寄る者がいないのにおかしいと思わないのだろうか。


とりあえず国を荒らしていないから愚王とまでは言わないが、アラミス公爵を警戒していない時点で国主として失格だ。


高位貴族はアラミス公爵を牽制し、アラミス公爵側はイルヴァン公子が戻ってくるまで大きく動く事は出来ないでいる。


貴族の中には国王夫妻が溺愛する第二王女に擦り寄り、あわよくば第二王女の伴侶となり王座を狙っている。


混沌とした王城で孤独な姫をスードの皆が案じていた。


一年に一度数日の視察滞在中は好きな事をさせようとなった。視察団の目を逸らし子供らしくいられるように。

後、若の暴走を見張り止められるように。


姫が11才になった時、若は添い寝を断られた。


理由は


「私も大人になったから」


だそうだ。


姫と別れた後の若は両手両足を地につけこの世の終わりのような顔をしていた。


姫の前では物分りよく頷き「そういうのはエリー(弟)を追い越してから言え。」と笑って抱き上げてた癖に。


「誰だ、ユリィに吹き込んだのは!」


吹き込むとかじゃなく貴族令嬢は兄妹でも一緒に寝ません。

ましてや姫は王族。


今まで添い寝出来てたのが奇跡なんですよ。


添い寝断られたくらいで魔王化しないで下さい。

怖くて誰も近づけないでしょ。


その日は姫を離さずに食事もあーんやってます。

若、目がイッちゃってます。

姫の口をガン見しないで下さい!


夜、姫と笑顔で別れてから


「ユリィにチクった奴、殺す。」


不穏な発言を残して部屋に戻って行った。




わたしはどこで教育を間違えたんだろう。

「教育の間違いとかじゃないんじゃないですか?」

「生まれ持った性癖?」

「でも6才の姫、可愛すぎたもんな。」

「拐かされずにいたのが不思議なくらいでしたよ。」

「王城の奴ら目が腐ってんじゃない。」

「姫の頬っぺふにゅふにゅしたい~」


不敬な発言をした奴は右頬を殴られ吹っ飛ばされた。


性癖·····

そうか、性癖か。

それを姫の前で綺麗に隠して兄として振舞っている若を尊敬します。

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