夢、幻。

三郎

第1話

 三年付き合った彼氏にフラれた。

 話があると呼び出され、プロポーズかと期待して待ち合わせ場所にいくと告げられたのは別れだった。

 好きな人が出来た。だから別れてくれ。

 彼が浮気していることには薄々、気づいていた。だけど気づかないふりをしていた。このまま気づかずに純粋な女のフリをしていればきっと、罪悪感に耐えられなくなってやめると信じていた。信じたかった。愛されていると、捨てられないと、信じたかった。


「お疲れさん。ほれ、気が済むまで飲め。私の奢りだ」


「うぇぇ……由紀子ゆきこのそういうところ好きぃ……」


 友人である由紀子の奢りで、浴びるように酒を飲んだ。


「さっさと切り替えて新しい恋しな」


 彼女はそう言うが、三年も付き合ったのだ。結婚も視野に入れていた。そう簡単に割り切れるものではない。

 新しい恋なんて、そんなすぐにできるわけがない。そう思っていたある日のこと、インターネットで女性専用の風俗があることを知った。


「……風俗」


 新しい恋をしろと、友人は言った。言ったが、風俗は違う気がする。しかし、気になってつい調べ進めてしまう。すると、実際の利用者による感想をまとめたブログが出てきた。どうやらこの女性が利用したのはキャストが男性ではなく女性しかいない風俗らしい。キャストが女性だけの、女性専用の風俗。いわゆるレズ風俗というものだが、ブログには女性間風俗と書いてあった。風俗とは言うが、ブログを書いた女性が利用したのはデートのみのコースで、性的なサービスは受けなかったそうだ。

 ちなみに女性は異性愛者。同性愛者でなくとも利用できるようだ。


「デートのみ……」


 それならまぁ、気晴らしに利用するくらいなら良いだろうか。そう思い、ブログで紹介されていた店名を検索する。

 キャストの写真がずらりと並ぶ。なんだか生々しいなと思いながらスクロールしていると、一枚の写真に目が止まる。


「えっ、女の子……だよね……」


 Tシャツとジーパンというラフな格好をして、こちらに微笑みかけながら手を振る人物の写真。どう見ても男の子だ。名前はリク。名前も男の子っぽい。

 私は少年のようなあどけない笑顔に、一瞬で撃ち抜かれてしまい、気付けばデートコースで予約を入れていた。一時間だけ。デートだけ。女の子と遊びに行くだけ。そう何度も自分に言い聞かせて。

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