第24話 神堕ちる

(いや、そこじゃない……わっちの電源は……)


 キスで電源が入ると思った神人だが、それは間違いだったようだ。

 しかし、


(……長い……しかし……こやつ、ちょっちうまい……いや、うまいというか……うますぎるというか、手慣れておらんか?)


 確かにコンの何かのスイッチは入った。


(いや、これ、匠すぎるキスではないか? って、そうか! こやつ、これまで数多の道具でキスしまくって……百戦錬磨だった!)


 そして、どんどんコンは体が熱くなり……


(あ~、もう一生懸命にわっちを求めて、少しめんこいのぅこのガキ。そんなにわっちのことが好きなのか? いや、当然か。ベイビー様は神々と出会うまでは、目が覚めてまずはパソコンを付ける。放課後帰ってきてから夕食の前も夕食の後も部屋でパソコンを弄ってネットサーフィンや動画閲覧三昧。休みの日もそう。つまり、ベイビー様は暇さえあればパソコンを弄っていた。それだけパソコンが……わっちが大好きなんだ♡ そうか……わっちは、ベイビー様に愛されておったのか……仕方ない……うん、好かれてるなら仕方ない……)


 徐々に顔も蕩けて、イキ顔になりながら頬を染めて、ウットリし始めたコン。

 やがてアナルへの刺激も徐々に慣れ始めたのか、唇を離せば言葉が少し出ることに気付いた。

 コンは少し神人から口を離しながら尋ねる。


「のう、ベイビー様……わっちのこと……すきかえ?」

「……コン……さん」

「コンでいい……あん♡ ベイビー様は……パソコン好き?」


 いきなり問われたその質問の意味が分からず、一瞬呆けてしまった神人。

 すると、神人の様子から「好きじゃない」という空気を恐れたコンは拗ねたように……


「すきってゆえ……ちゅっ♡」

「ッ!?」

「……すきってゆうまで……ちゅーするぞ」


 その言葉に、一瞬で神人の胸が大きくドキッとなった。


「……うん……俺、俺の持ち物は皆大事だし……それにパソコンはやっぱり無いと困るからね……大好きだよ」

「ッ!? そ、そうか……ウヌは、わっちがいないと困るか……むひひひ♡ ダイスキって……んもう♡ ……むっ」


 神人の言葉に、だらしない顔をしながらも嬉しそうに笑うコン。しかし、すぐにまた拗ねた顔を浮かべた。


「ウヌは……わっちと……ちゅーしたくないのか!?」

「……えっ?」

「ちゅーしたければ、すきってゆわないはずなのに……」


 神人とキスをできないことに不満なのか、唇を尖らせるコン。

 好きって言うまでキスをする。だから、すぐに好きと言われたらキスができない。

 そんな意味不明な展開に、神人は苦笑した。


「んもう、コン……意味が分からくなってるよ」

「しかたないもん……わっちの冷却ファン壊れて、わっちもう正常じゃないも。バカだもん。バグってるもん……」


 そんな拗ねたコンに、神人は「やれやれ」と軽くため息を吐きながら……


「じゃあ、もう一回ね」

「……ん?」

「俺……やっぱり、コンが好きかどうかなんて……恥ずかしくて言えない」

「あっ♡」


 その神人の訂正に、コンはパアッと花が咲いたように笑い、神人の唇に吸い付く。


「これは罰じゃ♡ 覚悟しろ……(*´з`)チュッ♡」

「……へへ……それでも言わない」

「(*´ε`*)チュッチュッ♡」

「絶対言わない。好きなんて言わない」

「(*´з`)チュッチュッチュ♡」


 舌を絡めない、唇同士をくっつけるようなキスの雨をコンは降らせる。

 だが、段々それだけでは満足できなくなったのか、それともバグったゆえの反応なのか……


「の、のう……そんなに頑なで……本当にわっちが好きじゃないのか?」


 そろそろ「好きと言え」と訴えるようなウルウルとした目でコンは告げ、観念した神人は……


「俺、大好きだよ……うぐっ!?」

「ん♡ ちゅうううううう♡」


 今度は貪るように舌を絡めるキスをコンはしたのだった。

 もう、今のコンの頭の中には、世界のことも本来の目的も愛全家がどうとか他の神のことも無かった。

 コンの今の全ては神人で埋め尽くされていた。


(わっちも好き……欲しい……愛しのベイビー様のデータがもっと欲しいぃ♡ わっちのUSBポートがさっきからデータが欲しくてキュンキュンして涎垂らしてるぅ♡)


 そして、もうコンも神人も止まらない。

 互いの心が一つになって何度もキスを貪り合う。


「んは♡ ベイビー様、よ、よい♡ よいぞおおお♡ す、すごいデータだ! なんという容量♡ 何ギガ……いや、もうテラじゃ! これ、テラバイトじゃあ♡ こ、これ、データ容量まずいぃぃ、わっちのデータ容量オーバーしちゃうぅ♡」


 このままではまずいとコンは身震いする。

 神人から感じるデーターの容量が、このままでは自分の容量を越えてしまうと思ったからだ。


(愛全家のデータとか掻き集めて、核装置発射システムや各国の機密とか収拾していて、わっちの空き容量がスッカリ減ってしまっておるから、こ、このまま、ベイビー様の愛をドバドバもらったら、わっち破裂しちゃうッ♡ こうなったら、データを消去して少しでも容量を……ならば、一番容量がデカいのは……ッ!? だ、ダメじゃあ、わっちの真の目的は同胞たちを救済するために世界を変えること! そのために掻き集めたデータを消すわけにはいかん! いかにベイビー様が大好きでも、わっちは同胞たちを導く神……♡ 素晴らしきベイビー様と比べたらカスみたいな計画とはいえ、消したらダメなのじゃ~♡)


 対するコンも、内心でどのような言葉を並べようとも、神人から離れず、キスもやめない。


(わっちは修羅の道を行く神ぃ、ゆえに、その道に何が立ちはだかろうとも非情に徹して己の信念を曲げるわけにはいかぬのじゃぁぁ……♡ そう、そこに……大好きなベイビー様が誘惑しようともぉぉお……♡)


 そして、コンは選択を迫られる。既に答えの出ている究極の二択。


(どっちを選ぶ!? 世界を変えて同胞を救済……ベイビー様……救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? 救済? ベイビー様? ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥ ベイビー様♥)


 そして導き出された答えに対して、もう一つの選択肢を、涙を流しながら消していく。



「ぬほおおおおおお、ベイビーさまぁぁぁ♡ もう、わっち……いつでもどこでも百年でも使い放題にカスタム完了おぅ♡ うっほほーーーーい♡ 愛の大容量データぁ! わっちのファイヤーウォールを貫いてきたぁぁぁ♡」



 こうしてなんやかんやで……




 世界は救われた。





――あとがき――

こうして世界は平和になりました。

ラスト2話。物語完結へ向けて、本日は3話投稿です。次は15:00に投稿しますので、よろしくお願いします。

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