第56話
「すみません…フレッド様はどうされたのですか?」
シドが部屋に戻ると真っ先にレミリアがそう尋ねてきた。
「フレッドさんは書類をまとめに戻りました…あなた方はもう少しここで待機していて下さい」
「なんだと!まだここに居ろと言うのか!」
「嫌なら出ていって構いませんよ。他の国にでも向かってください。ああ出口はあちらです」
シドは外を指さした。
「くっ…わかった…だが食べ物は用意しろ!」
「ハイハイ…はぁ何様なんだか…」
シドが呆れて返事を返す。
「あの…私、お花を摘みに行きたいのですが…」
シドが外に出るとレミリアが小さな声で恥ずかしそうに頼みこんで来た。
「わかりました、いまメイドを連れてきますから中でお待ちを…」
シドはそう言うと部屋にレミリアが戻るのを確認してその場を離れた、するとすぐにメイドが顔を出した。
「ご案内しますのでこちらに…」
メイドの案内でレミリアは後をついて行く…が途中でメイドの目を盗んで柱の陰へと身を隠す。
メイドが居なくなるとそっと身を隠しながら建物の中を歩き回った。
するとお目当ての人が…風に当たるフレッドを見つける、その悲しそうな顔を見てニヤリと微笑んだ。
「フレッド様…お加減でも悪いのですか?」
名前を呼ばれてフレッドが振り返るとそこにはレミリアが…思わず眉間にシワがよった。
「なぜここに…」
周りを確認するが誰もそばに居ない。
「あっ!その…お花を摘みにきたのですがメイドさんとはぐれてしまって…部屋に戻ろうと探しているところであなたの悲しそうな顔が…」
目を潤ませて心配そうに見上げる。
「あなたはあの男のそばにいるべきでは?」
「それは…ジョージはとてもいい人よ、でも…見ましたよね…彼、興奮すると暴力を…私も叩かれた事があるんです…」
頬を押さえて涙を一粒流した。
「へぇ…あの男が?」
「はい…私!もう耐えられなくて…でもあの場ではジョージがいるから言い出せなかった…お願いですフレッド様…私を助けて…」
レミリアはフレッドに抱きついた。
「もう少し…彼にされた事を詳しく教えて貰えるかな?」
フレッドはレミリアの肩を掴んで顔を覗き込む。
「はい…フレッド様になら…」
レミリアは頬を染めて頷いた。
レミリアはフレッドに縋り付きジョージの事をある事ない事話し出す。
話を聞くフレッドは終始無言で聞いていた。
「・・・・・・ですから、コスリガ国があんな事になったのはジョージ様のせいなのです。私は何度も止めようとしましたが、女の私は余計な口を出すなと…」
ここでポロッと涙を流す。
コレで落ちない男はいないのよね…
レミリアはチラッとフレッドを見つめる。
「それは…」
フレッドは不快感をあらわに眉間に皺を寄せていた。
「あの人のせいで母も父も…二人の事をお姉様に話して私も謝りたい…」
「そうか」
「ですからどうかこの国に置いてください!その為なら…私…」
レミリアはフレッドの手を取ると自分の胸に押し当てた。
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