第40話

「ルフレシア…お前の望みはなんだったんだ」


フレッドは申しわけなさそうに呟いた。


「望み?」


いざそう言われてルフレシアは思考して、黙ってしまった。


「……何もしていませんから望みなんて…でも急に好いていた方に理由もなく避けられたら、それは面白くありませんよね」


「そうだな…シド、少しルフレシアと二人っきりにさせてくれないか?」


フレッドはシドに出ていくように頼むと


「王子…それは」


「大丈夫だから」


王子は問題ないと頷いた。


令嬢が体格差もある王子に何か出来るとは思えない事と…ここに来る際に身体検査もしてあるのでシドは渋々頷いた。


「では…扉のすぐ前に兵士達と立っております。何かあればすぐに突入しますからね」


「わかった、助かる」


シドは二人をじっと見つめてため息をつくと部屋を出ていった。


「フレッド様…ごめんなさい…」


ルフレシアは二人っきりになると眉を下げながらフレッドにそっと抱きついた。


よく知る胸板や匂いにほっとして擦り寄ると…


「ルフレシア…君とはもう出来ない」


フレッドはルフレシアの肩をそっと掴んで体から離した。


「フレッド…様?今回の事、そんなに怒ってらっしゃるの?」


「いや、君には怒っていない…自分に呆れてるだけだ。だからこういう事は全て終わりにする…君との日々は楽しかったが安堵できる場所ではなかったようだ」


「安堵…彼女とならそれが出来ると…フレッド様にそんな事必要ですか?そんなに彼女がいいと?」


「そうだ…ロレッタの為ならこの軽い頭をいくらでも下げよう。すまなかった」


フレッドの変わりようにルフレシアは驚いた。


「フ、フレッド様には無理では?いいんですよ私は、内緒で付き合ったって…それに王子なんですから何人女性がいたっていいじゃありませんか?」


「そうだな…前の私ならそう思っていただろう。でも今は彼女に会ってしまった…傷ついた彼女をこれ以上傷つけたくないんだ。すまない…謝れと言うならいくらでも謝ろう。なんなら気が済むまで殴ってくれても構わない…ここだけの事とする…」


フレッドはルフレシアに再度頭を下げた。


「そこまで…」


ルフレシアは王子の態度にフッと気持ちが離れていった。


「もう…いいです。フレッド様がまさかそんな方だったとは、私がお慕いしていたフレッド様はもういらっしゃらないのですね…」


「すまない…」


「でも…そんなフレッド様をあの方は好きになるかしら?」


「グッ…それは…」


「まぁ私としてもう…どうでもいいですけど…それで?私の罪はどうなるのですか?」


「今、君が雇ったペストンを調べている。何か裏がありそうだな…早い内にきっとバレるぞ。今ならまだ話せば罪も軽くなる」


「ご心配どうも…でも大丈夫ですわ。本当に#私は__・__#何もしてないので…」


「ロレッタが目覚めれば全部わかることだぞ…話すなら今しかないんだ」


「それでも同じ事…それにもうどうでもいいですし…」


ルフレシアは寂しそうに笑った。


「わかった…では近いうちに罪状が伝えられる。それまで牢屋に入っていてもらおうか」


「わかりました…でもその前に…」


ルフレシアはニコッと笑うと手をふりかぶる。


フレッドはその動きをスローモーションの様に感じていた…


ルフレシアの平手がフレッド王子の頬を思いっきり叩いた。


バッシーン!!


王子の左頬がうっすら赤くなると…


「王子!!」


音を聞きつけたシド達が慌てて部屋へと飛び込んで来た。


「問題ない」


王子はルフレシアを捕らえようとする兵士を止める。


「これは自分でやったものだ」


自分の頬を撫でる。


「しかし…」


「行くぞ」


フレッド王子はさっさと部屋を出ていく…困惑する兵士に声をかけてシドもそれに続いた。


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