第3話 家
僕たちとクノウさんは来た道を戻り、家に戻った。
周りは洋風でオシャレな外観の家ばかりだが、僕らの家だけとても古い。
「では、失礼します」
僕たちは中に入った。
中は家具が倒れ込んでいてグチャグチャだ。
「一度も使わずに壊れちゃったわね…」
母さんはため息をついた。
「暗いと思ってこちらを持ってきました、どうぞ」
クノウさんは持ってきた袋の中から石を取り出した。光を放っている。
「こちらは私どものお仲間に強い光を放つ物がおりまして、その方が作られたんです」
そう説明をすると、家の所々に置き始めた。
「約一ヶ月ほど持ちますので、光が弱くなってきましたらお声がけを」
改めて散乱した部屋を確認した。
「こんなに散らかってたのか…」
「よし、まず片付けるか、お前たちは上にあがって色々見てきてくれぇ!」
父さんはそう言うと壊れた棚を横に放り投げた。
「うわ、最悪…」
二階ももちろんグチャグチャだ。
「明日にでも力自慢な方々をお連れしましょうか」
クノウさんはまた石を置きはじめた。
「そうしていただけると助かるんですけど、クノウさんどこで寝ます?」
「どこでも大丈夫ですが…」
クノウさんは部屋を見渡し、言葉を詰まらせた。
「どこでもって言っても、片付いてないから…」
母さんも困った様子だ。
「なあ!ちょっと手伝ってくれないか!」下から父さんの声が聞こえた。
「待ってお父さん、今行くから」
「それでは私も」
母さんとクノウさんが下に降りていくのを横目に、作業に戻ろうとした時…
「おい!なんだこれ!力が、力がすごいぞ!」
父さんが嬉しそうに叫んだ。
「なんだろ、お兄ちゃん」
「見に行こう」
下に向かうと…
「おい見てみろ!どうだこの腕!」
父さんの腕がいつもより大きい、ふた周りぐらい太くなっている。
「もしや…!すみません、少しおでこを貸していただけますか」
クノウさんと父さんがおでこをくっつけた。
「これは…そうですね…」
クノウさんは腕を組み、首を傾げた。
「言葉で説明するのが少し難しいですが、自分の体、そして能力を二倍にする能力、と言ったところでしょうか」
体を二倍、だからこんなに腕が太くなっていたのか。
「どのように腕が太くなったか教えていただいても?」
「そうだな、この冷蔵庫を持ち上げようとした時だ、なんかこう、俺の腕持ちこたえてくれ!って心の中で叫んだらでかくなっちまった」
「なるほど、そうですか、それでは心の中で頭!と叫んでみていただけませんか?」
クノウさんはニヤリと笑った。
「え?ああ…うおおああ!」
父さんの頭が大きくなって、バランスが崩れた。
「おい!どういうことだ!」
「すみません少々見てみたくなりまして、これで発動条件がほとんど確定しましたね」
クノウさんは満足気に父さんを見ている。
「心の中で体の部位を唱えるで間違いないでしょう、これから色々心の中で唱えてみてください、他にも体の部位以外に作用するものがあるかもしれません」
「お、おう、えーと?…よし治った」
「大きさ元に戻りましたね、今なんと唱えられたんです?」
「親指ってな、一階は俺がどうにかやるから上やっててくれ」
そう言って笑顔で立てた親指がとても太かった。
「私の能力?ってどうやったら使えるんだろ、あの時私何考えてたかな」
和は上を向いて考える。
ある程度片付いてきた。
「一階大体終わったぞ!」
父さんが階段を上がってきた。
「腕力!って唱えたらひょいって持ち上がったぞ!はっはっ…」
その時だ。
「なんだ!また揺れてるぞ!」
雷の時とはまた違う揺れが家を襲う。
「皆さんはしゃがんで固まっていてください!確認してきます!」
クノウさんはゆっくり階段を降り、家を出た。
「あの人大丈夫かしら…?」
「この家来てからほんとろくでもないことだらけだよ…」
和はそう言いながら泣きべそをかく。
少し経って揺れが納まった、だがクノウさんは一向に戻ってこない。
「揺れも止まったし、俺外見てくる」
父さんは外に飛び出していった。
釣られて僕らも家を出た。
家を出ると、そこには地獄のような光景が待っていた。
周りの家は全て破壊され、辺り一辺に火が燃えている。
城のあった方を見ると破壊はされていなかったが、空を飛ぶ影が城の方に向かっていた。
「お前ら!クノウを見てないか?!」
ボスがこっちに走りながら叫んだ。
「あと…お前ら、家はどうしたんだ?」
ボスが驚いたように僕らの後ろを指さす。
振り向くと、そこにあったはずの家が無くなっていた。
「まあいい、今は逆にこっちに来た方が安全だろう、さっさと走ってついてこい!」
ボスは城の方へ走っていく、何も言う暇もなく僕らも着いて行った。
城の前に着くと、さっき城の方に飛んでいたやつらがちょうど目の前に着地した。
それは常に身体中が燃えている者と、周りの落ち葉を巻き上げるような風を纏った者の2人組だ。
「なあお前ら、王はどこだ?」
そう言ったのは炎を体に纏っている方、口を開く度に熱風が口からは流れてくる。
「魔王様によればこの男は王の大切なものだと聞いたが…」
もう片方の男は体の中に手を突っ込んで、中から檻を出した。
そこにはクノウさんが捕らえられていた。
「「クノウさん!!」」
「この水玉の服着たやろうが大事なやつか、なあウィド、この服焼いて全裸にしてお前の風で風邪にしてやろうぜ!」
「なんなんだバーニ、そんなしょうもないことするわけないだろ、おい貴様ら、早く王を出せ、貴様らに用は無い」
「このまま出てこないならこいつ焼いちまおっかな~」
クノウさんに向かって火をゆっくり近づける。
「待て!ここにいるぞ」
王が城の中から出てきた。
「何が目的じゃ?要件を言ってくれ」
「やーっとでてきたか、うちの魔王から伝言だぜ、「宣戦布告だ、手始めにこの男を預かる、殺すつもりだ、私を止めに来い」だとよ」
「…なんじゃと?」
王は唖然とした。
「魔王様もよく分からないことをおっしゃる…」
「じゃ、この水玉預かるぜ~、ウィド、管理はよろすく~」
「まあ、そういうことだ、私がこいつを預かる、返して欲しければまず私を倒しに来るんだな」
クノウさんを連れて、2人はどこかへ飛んで行った。
僕たちはただその光景を見るしかなかった。
王の表情はだんだんと曇っていった。
「お、王…」
ボスはゆっくり近づいて話しかけた。
「取り戻しましょう、クノウを…」
「協力…してくれるのか…?」
「もちろんです、戦えるやつらを集めて作戦会議しましょう。」
そんなやり取りをしている中、父さんが。
「俺も…俺も手伝うよ」
父さんが2人に近づいていった。
「ちょっと、お父さん…!?」
「俺たちの中で唯一能力をちゃんと使えるんだ、何か役に立つかもしれねぇ…」
「そうね…私も出発までに見つけてみるわ…!」
「母さんまで…!?」
父さんと母さんはやる気だ。
僕たちが産まれる前から様々なところに2人でボランティアに行ったりと、困っている人がいたら助けに行ってしまう性格上仕方ないのかもしれない。
「2人は危ないからこの街に残ってなさい」
父さんは和と僕の肩に手を置いた。
「いや、この街の方が危険なのか?うーん…」
僕たちの肩に手を置きながら考える。
王も少し元気を取り戻したようだった。
「いや、ちょ、ちょっと待って、私も頑張るよ」
和は胸をポンッと叩いた。
「私もなんか分かんないけど能力持ってるらしいし」
「僕も、まだ見つかってないけど、もし持ってるんだったら手伝いたい」
「そうか…お前らやっぱり俺らの子供だな!」
みんなで見つめ合い、微笑んだ。
「燃えてる家を消化する作業に入りますので、王は城の中へ」
ボスは指を鳴らし分身を作り出した。
「よしお前ら、バケツリレーだ!」
ボスは分身とともに走っていった。
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