異世界転居〜次の移住先は異世界です〜
花畑 空間
第1話 転居
「準備できたか!」
他所など気にしないほどの大きな声で父さんは叫んだ。
僕は「今行くから」と窓から軽く身を乗り出し言った。
「次に住むところはだな、だいぶ田舎だぞー」
父さんは引っ越す度にこの住むところの説明をする。
「もうなんか、いいよ早く行こ、お兄ちゃん」
「まあ
母さんは車に乗り込んだ妹に対して、なだめるように言った。
「だってすぐ引っ越しちゃうじゃん、どんなに気に入ってもさ」
今まで住んでいた場所も悪くなかったが、なぜか父さんはすぐ引っ越したがっていた。
「だな…でも次に住むところでひとまず落ち着こうと思ってるぞ」
父さんは焦りながら答えた。
「さ、荷物運ばなきゃだし、そろそろ行きましょう、
母さんは手を叩き、話を終わらせた。
さっきまで住んでいたところはまだ住んで1ヶ月も経たない。でも結構立派な家だった。
「ねえお母さん、次の家ってどんなとこ?」
携帯をいじりながら適当に質問をする
「そうねぇ、あ、お父さん、あの話って言ってもいいのかしら?」
「ん?ああ、まあいいんじゃないか?面白いしな」
「なになに、あの話って」
「実はな、次住む家はいわゆるいわくつき物件ってやつなんだ」
父さんはニヤニヤしながら後ろを向いた。
「え、それって大丈夫なの?」
「そこに住んでた人が二回も行方不明になってるのよ、最初にお父さん、その次にその子供が二人ね」
「つーわけだな、どうだ?面白そうだろ?」
「うん」
僕は少し楽しそうと思ってしまった。
「さすがお兄ちゃん、物好き」
「そろそろ木がいっぱいになってくるわね」
窓を覗くとだんだん木が増えて、少し経てばもう太陽が見えないほどにぎっしりと木が生えていた。
「暗くなってきたな、まあもうすぐ着くから安心しろ!」
父さんは勢いよく後ろを向き、ウインクしながら親指を立てた。
「後ろ向かない、車揺れるから危ない」
冷たく母さんが言うと、父さんはゆっくりと前を向いた。
「見えたぞ~」
代わり映えのない景色から、木造の家が見えてきた。
「前に住んでた人の家具がそのままあるらしいわよ」
中に入ると、たしかにある程度の家具は揃っていたが、明かりがない。
「電気早く通さないと困るんだけど」
不機嫌そうに携帯のライトで前を照らす
「すぐ通すからなぁ…痛っ」
ガツッと大きな音がした。父さんは体が大きいからすぐどこかにぶつかる。
「まずい、祭壇っぽいぞ、呪われちまうーなんてな」
車の中の話があったのによく笑えるなと思う。まあそこが父さんの強みなんだろう。
「あんまり聞きたくないんだけどさ、その行方不明になったのっていつなの?」
「そうだ、それなんだよ、今日がちょうどなんだよ」
思い出したように父さんは言った。
「ちょうどって?」
「最初に親父さんがいなくなったのが今日からちょうど二年前、子供たちがいなくなったのはちょうど一年前なんだよな」
「え、怖い怖い怖い」
「まあ大丈夫だ、安心しろって」
父さんは謎の自信にいつも溢れている。
二階に上がって、僕の部屋、
「この家結構広いじゃーん、庭もあるし、ねえお兄ちゃん」
「そうだね」
「ここだけの話、何回も引っ越してたから、うちの家計が結構まずくてな、いわくつき物件しか住めなかったんだ、でも喜んでくれて安心した」
「何回も引っ越させてごめんね、二人とも」
父さんと母さんは僕たちに優しく声をかけた。
「なんか落ち着いた雰囲気のところ悪いけどさ、なんか揺れてない?」
「たしかにそうだな、うお!」
雷のようなゴロゴロ音も聞こえてきた。
「この家大丈夫かしら、嵐とかだったら怖いわね」
「とりあえず、みんな固まっていよう」
僕たちは四人で身を寄せあっていた。
そして全ての窓から光が入った。
「うわぁぁぁ!!!」
全員が叫んだ次の瞬間、その声をもかき消すほどの大きな音が鳴り響いた。
「おい!無事か!」
父さんが耳元で叫んだ、思わず手で顔を押してしまった。
「んむっ、起きたか、よかった」
起き上がると雷に打たれたはずの家は傷一つ無かった。
ただ、なぜか外が騒がしい。さっきまでまわりに家などなかったはずなのに家族以外の声がする。
「ちょっと俺が外を見てくる、お前らは待ってろ」
父さんはゆっくり階段を降りていった。
「お父さんを一人にはできないわ、二人とも行きましょう」
結局僕たちも着いていくことになった。
扉を出ると、父さんは同じぐらいのガタイをした顔が犬の、鎧を着た二人に槍を突きつけられていた。
「何者だっ!」
「ボスに報告をっ!」
何が何だかさっぱりだ。まるで夢の中のような感覚だ。犬が喋った、しかも人の体をした犬だ。
二匹とも表情が違うが、犬種は同じだろう。まあそんなことはどうでもいい。
「なあ、これどうすればいいんだ?」
父さんは困った顔でこっちを向いた。
「ボス、突然空から家が落ちてきて、中から人が四人ほど現れましたっ!」
トランシーバーで、あの二人の言うボスに連絡をしたようだ。
トランシーバーをしまうと、またすぐ父さんに向かって槍を向けた。
少しすると向こうからこれもまた同じ犬種の人が現れた。ただ、少し鎧が違う。
「ボスっ!こちらがその四人です!」
これがボスか……
見た目にほとんど変化は無いものの、表情が固定されていない。他の二人は表情が笑顔と泣き顔に表情が固定されてるようだ。どんなに叫んでも表情が変わっていない。
「おい、とりあえずあっちに並べ」
ボスは父さんをこっちに向かって投げた。
「お前ら、敵か?それともなんなんだ?」
ボスは並べた僕たちの前をうろうろしている。左右にはさっきの二人が槍を構えている。
「私たちも何が何だか、突然雷が落ちてきたと思ったらここに」
母さんがそう答えると、ボスは何か思いついた表情を見せた。
「そうか、お前ら、何もするなよ?付いてこい」
ボスがパチンと指を鳴らすと、槍を持った二人が煙のように消えた。
「お前らにはちょっと話が聞きたいんだ、もう槍を向けない、何かしない限りな」
ボスは歩きながらそう言った。
そして僕たちは言われるがままに後を付いて行った。
「ちょっと!ボス!」
突然後ろから声がした。
「俺の家が古くなったんだけど!」
そこには僕たちの家を指さす青年がいた。ボスのような鎧を来ているが、比較的軽そうな見た目だ。
「ああ、その家はこいつらのだ、空から突然降ってきたんだとよ」
「ていうことは元々ここにあった俺の家は潰れたの!?」
青年は走ってこっちに向かってきた。
「え、ああ、そうじゃないか?」
「おい!君たち!俺の家をよくも…」
青年は突然静かになった。
「よし、分かった、俺の家を潰した代わりに、その子を嫁にくれ!」
青年は
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