午前零時の窓辺

宵中窓辺

くるしみと三日月

ずっと見ている

小さな私がずっと私を見ている

私は小さいまま幼いまま

あるべき姿と今の自分となりたい自分と幼くある自分が癒着して離れなくて痛い

痛い


おかあさん、どうしてわたしをにんげんとしてうんでしまったんですか

人間として生まれて大人になるのが怖いんです

怖いんです

うんでくれてありがとう、でもわたしはなにもかえすことができない あなたにしがみついて生き恥をさらすことしかできない


不安が今日も心臓の右側面に陣取っていて離れてくれない 切り取ってしまえたらどんなに楽か知れない

死にたくないのに生きていたくない

何かで名をなしたいと思えど自分に自信はなくて天才を見て辛くなる


神様私は人間になりたくないんです

女にも男にもなりたくないんです

わがままだとわかっています

社会通念上の男や女の話などしたくはありません

私は自分が人間の身体を得て人間の女になるのが嫌です 身体も精神も変わっていくのが嫌です

でも子供のまま無知なまま、その無知で人を傷つけるのはもっと嫌です


私は天使でいたかった

子供が天使な訳がないなんて誰もがわかっているはずです

あいつらは悪意に満ちていて汚い

物を知らないから悪意を隠さない

私もそんな子供の一人でした

悪意で人を叩いて、その分叩きのめされて、やっと自分が嫌いになった瞬間、あの一瞬だけは私天使になれた気がしたんです

大人になりたくないんです

大人になりたくないんです

なんでもない人でもない天使になりたかった

責任も重圧も生きていくなかで大事な義務で責務であるなんてこと分かってます でも苦しくて


大人になりたくないんです

子供の私がずっと私の中にいるんです

嫌だって叫ぶんです



抱きしめられたいのに、人に触れられるのが怖くなってしまった

誰にも触れられたくないのに抱きしめられたいなんてとんだ笑い話だ

抱きしめられて頭を撫でられて褒められてもう大丈夫だよって頑張ったねって言われたいんです


でもそんな価値などないと、自分がそうされる価値などないと自分が一番分かっているから

人の体温が気持ち悪いから

人が嫌いだから

だから私はずっと渇望している


今笑えていることと これから先笑えることはイコールではなくて 明日にでも私は浴槽に沈む腐りかけのタンパク質になるのではないかと不安に思う


自分が悪意と汚さの塊のくせに、性善説にしがみつくおろかもの

自分は嘘をつくのに、ムシのいいことに人を信じてしまう そして裏切られて傷がつく

悪意などなくて不幸な事故だったんだろうと自分を誤魔化して、誰かの悪意から目を背けている


何度不幸になれば分かるんだ?


自分のことすら素晴らしいと思えない奴が人間讃歌を謳うな


その腕にある三日月型の小さな傷痕は、皮膚に残る線は、薄い跡は、全部自分の中の獣を飼い慣らせなかった末の産物だろう

頭蓋骨が軋む音も、左手中指が鳴る音も、爪が皮膚を抉る痛みも、目につくもの全てが自分を傷つけうることも、知りたくなんてなかった


お願いです誰も死なないで 私を置いていかないで

私を守っていて 誰かを守れるような人間じゃない

庇護下のままでいたいのに みんな老いていって私を置いてくの

寂しいよ

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