繋ぐ者たちの会話
ここは『Bar 天の川』。店主の
「ふぅ……今日はお客様がたくさんいらっしゃいましたね……」
そう独り言を言い、翔助は店の片付けを始めた。その時、彼のスマホが鳴った。
「誰でしょうか?こんな時間に……」
翔助は不思議に思いながら画面を見ると、その顔を曇らせた。
そして、仕方なさそうに電話に出る。
「……もしもし?」
『……あ、出てくれた!
電話から聞こえたのは、若い女性の声だった。
「……
『ねぇ、聞いてよ翔兄!あたしの店に、琴音市から来たってお客さんがいてさ~!!』
翼咲と呼ばれた彼女は、翔助の返答を待たずに話し続けている。
「……落ち着きなさい!」
『は、はいっ!!』
「まったくあなたという人は……。久しぶりに連絡をしてきたと思えば、いきなり何なんですか?」
『え~……。いいじゃん、妹が兄に電話するくらい……』
翼咲は不満げに言うが、翔助は呆れたように言い返した。
「よくありません。……それに、今は営業時間外です。用件があるなら手短に済ませてください」
『ちぇー……。相変わらず冷たいなぁ……』
「……もう切りますよ?」
『あっ!やだやだ!!ちょっと待ってよ!』
慌てる彼女に、翔助はため息をついた。
「はぁ……。わかりました。早く本題を話して下さい」
『うん……。あのね、その人がすんごく面白い人でさ……!』
「ほう……。どんな方なんですか?」
興味を持ったらしい彼に、翼咲は嬉々として語り始めた。
『えっとね……。まず最初にね……』
***
翼咲から話を聞いた翔助は、しばらく仰天してしまっていた。
『……翔兄?……翔兄、聞いてるの?』
翼咲の言葉を聞き、我に返った彼は言った。
「……はい。ちゃんと聞いていますよ」
『ホントかな〜?』
「えぇ。……それより、あなたの店に来ているのは《星野さん》という方なんですね?」
『そうそう!《姫井さん》っていう恋人が、そっち……琴音市にいるって言ってたよ!』
「あぁ……こんな偶然もあるものなんですね……」
翔助の呟くような返事に、翼咲は不思議そうな声で尋ねた。
『どうしたの?』
「いえ……。実は、私も姫井さんのことを知っておりましてね」
『そうなの!?すごい偶然だね!』
彼女は驚きつつも嬉しげに言った。そんな彼女に対し、彼は静かに告げた。
「そうですね。……ただ、姫井さんは星野さんと会えないことを寂しく感じているようですがね……」
『ふむ……。それは良くないね……。星野さんも寂しがってたし……。よし!決めた!』
「……何をするつもりなんです?」
翔助が怪しげな声色で尋ねると、翼咲は明るい調子で答えた。
『そんなの決まってるでしょ?二人が会えるようにしてあげるのさ!』
「……まさか、星野さんをこちらに呼ぶつもりじゃないでしょうね?」
『違うよ~!姫井さんをこっちに呼んで、星野さんと会わせるの!それが一番良い方法だと思うよ?』
翼咲は自信満々な口調で答えた。
「……それは確かに名案ですが、どうやって呼ぶんですか?姫井さんにも仕事があるはずですし……」
『……そこはほら、翔兄が姫井さんの背中を押してあげれば大丈夫だよ!きっとうまくいくから!……それじゃ、頼んだからね!』
「ちょっ……!」
翔助の制止を無視し、通話は終了したのであった。
(はぁ……。全く、困ったものですね……)
翔助はそう思ったが、同時にこう思っていた。
「……まぁ、姫井さんには幸せになってもらいたいですし、やってみますかね」
そう呟き、彼は再び『姫井さん』がこの店に来るのを少し楽しみに思うのだった───。
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