悩みと期待 [side 沙織]

[side 沙織]


 星野さんに、自分の気持ちを不意にこぼしてしまった日から、私は彼とどう接すれば良いのかがわからなくなっていた。


(どうしよう……。今までどうやって話していたのかしら……?)


 私はそんな風に悩み続けていた。

 ……しかし、いつまでもこのままではいけないとも思っていた。


(とりあえず、メッセージでも送ってみようかしら……。この間のことも謝らないとだし……)



 ぼんやりと部屋の天井を眺めていた私は、意を決してメッセージを送信した。


『こんばんは。姫井です。先日は、失礼な態度をとってしまって申し訳ありませんでした』


 私はメッセージを送ってから後悔した。


(あぁ……!これだと、堅すぎじゃないかしら……)


 私は焦りながらも、返事が来るのを待った。



 ……しばらく待っていると、星野さんからの返信が来た。私は緊張しつつも内容を確認した。


『いえいえ、気にしないでください』


 ……なんという優しすぎる返答なんだろう。


 私は感動した。それと同時に、ますます星野さんへの想いが強くなっていくのを感じた。


(星野さん……。やっぱり、私はあなたのことが好きみたいです)


 私はそう考えて、ため息をつく。



 ……この前はどうして「好き」だと口にしてしまったのだろうか。星野さんの、不器用ながらも飾らない笑顔を見て、私は自然と「好き」という言葉が出ていたのだ。


(私は一体、星野さんのことをいつから意識するようになったのかしら……)


 私は首を傾げた。……しかしいくら思い出そうとしても、きっかけらしきものが見つからない。


(うーん……。星野さんとは、最近知り合ったはずなのに……)


 私はまるで磁石のように、星野さんに惹かれている気がする。

 ……それは彼が優しいからなのか、それとも別の理由があるからなのかはわからないけれど。


 考え込んでいると、メッセージが届く音が聞こえた。



(あっ、星野さんからだ……)


 私はメッセージを確認する。


『姫井さん、明日の昼休みにいつものセボンでお会いできませんか?話したいことがあるんです』


 私はドキッとした。……話というのは、おそらく私の気持ちについてだと思う。


(もしかすると、星野さんは私と同じように……)


 私は期待に胸が膨らんでいくのを感じて、すぐにメッセージを送った。


『はい。大丈夫ですよ』


 ……すると、すぐに返信が来た。


『ありがとうございます。それではまた明日、お会いしましょう』



 メッセージを見て、私はベッドに倒れ込んだ。


(……星野さんは、私のことをどう思っているのかしら。好意を持っていてくれたら……)


 そう考えるだけで、心臓が高鳴っていく。……もしかすると、私達は両思いなんじゃないかと思う。


(でも、もしかしたら……)


 私は不安になる。

 ……もしかすると彼は、「ただの知り合い」として会おうとしているだけなのではないか……。


(いやいや!……そんなことは絶対にありえないわ!)


 ……私は自分に言い聞かせるようにして、枕を抱き締める。


(星野さんは、きっと私に好意を持ってくれてるはずだもの……。だから、大丈夫よ……)



 ……しかし、それでもなかなか寝付けなかった。


(この歳にもなって、恋で悩むことになるなんてね……)


 自分でも驚いてしまう。


(でも、星野さんとなら……。星野さんとなら、どんなことでも乗り越えていけるような気がするのよね)


 そう考えているうちに、少しずつ眠くなってきた。


(星野さんは、どんな話をしてくれるのかしら……。明日会うのが、楽しみだわ……)



 そうして、ゆっくりと眠りについたのだった―――。

 

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