怒りの矛先
バブみ道日丿宮組
お題:阿修羅祖父 制限時間:15分
人は怒ると修羅になるというが、祖父はまた違う気がする。
私が怒られてるわけじゃないんだけど……怒りの範囲的には私にも及んでる気がする。
怒ってる理由は、お父さんが祖父の大事にしてた壺を割ってしまったということ。
大事にしてたものをなくされたり、壊されたりして、悲しくなるのはわかるし、怒りたくもなるだろう。
新しくて同じのを買えばいいじゃないかというお父さんの言い分は通らない。
同じ生命が2つないように、同じものは存在しない。それは食べ物でも、生き物でも、無機質でも変わらない。
みんな、みんな違うんだ。
だから、同じものはないし、新しいものを買ってもそれはそれじゃない。
話しかける前にリビングから退散しようと思って足を動かそうとすれば、こっちを見てなかったはずのに祖父の声が隣から聞こえた。
振り返ると、位置は変わってない。
それなのになぜか声だけがすぐ隣から聞こえてくる。
これは……まさに阿修羅のごとくなのかもしれない。
怒りの矛先が来そうだったので、リビングの扉にしゃがみ込む。
さすがに姿が見えなくなれば、関係ないよね? と思うが、まさに関係なく声はやはり隣から聞こえた。
祖父に名前を呼ばれ、思わず元気よく立ち上がる。
まだ怒るのだが、割れた壺は危ないから片付けて欲しいとのことだった。
私はその言葉に従った。
お父さんの前を必然的に通るわけだけど、すごく青かった。
今までみたことのないような表情をしてた。
壺を二重にしたビニール袋に入れて、台所の端に置いた。
これでお役御免だろうと、リビングから一歩足を踏み出せば、今度こそ声は聞こえなくなった。
大人しく部屋に戻り、祖父のご機嫌がよくなるのを待とうと思う。
今日は一緒にお風呂に入る約束をしてる。
怒ったままで一緒には入りたくない。
お風呂では誰でも裸。心も裸でなくてはならない。
高校生になってもまだ入ってるけれど、いったいいつまで一緒に入れるのだろうか。
素朴な疑問が身体の中を渦巻いた。
怒りの矛先 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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