大切な『お兄ちゃん』
木津根小
1
男は、女の子をジッと見つめていた。
薄いピンク色のTシャツに黒いスカートを履き、肩の辺りまであるサラサラとした髪を、優しく揺らしながら、歩いていた。
そして、可愛らしく、優しい顔立ちだった。
その容姿が、男を興奮させ、注意を引いた。
男は、ギラつかせた目で女の子を見ると、ニヤリと笑った。
ユズナは小学5年生の女子児童。
友達と別れると、家に向かってゆっくりと歩いて帰っていた。
すると、突然、後ろから男に声を掛けられた。
ユズナは振り向き、声を掛けた男を見た。
今まで見た事の無い大人の男。
しかも、雰囲気が何となく、他の大人と違って感じた。
先ほどまで、ユズナをジッと見ていた、男だった。
「こんにちは。
あのー、良かったら、ちょっと手伝って貰えませんか?」
男はオドオドした気の弱そうな顔で、とても困っているといった素振りを見せた。
「えっ。。。でも。」
ユズナは、顔を強張らせると、ジッと男を見た。
「あっ、無理だったら良いんです。
子猫が、高い所へ上がったきり、下りれなくなったみたいで、助けようと思ったから。」
男は、申し訳なさそうな顔で言ったが、もちろんそれは、ユズナの気を引くための嘘だった。
「えっ、子猫が。。。」
「はい、こっちなんですけど。」
そう言うと、男はユズナを見ながら、歩き出した。
ユズナも、男の後に付いて、歩き始めた。
「高い棚の上に、あがったきり、下りれなくなったみたいなんです。」
男は歩きながらそう言うと、ギュっとユズナの手を握った。
ユズナは突然手を握られ、ビクッと驚いた。
(でも、子猫を助けないと。。。)
そう思い、不安な気持ちのまま、男と一緒に、ある建物に入った。
その建物は、平屋建ての小さな古い倉庫だった。
どうやら今は使用されていないらしく、ドアは壊れ、窓ガラスも幾つか割れていた。
倉庫の入口のドアを開け、ユズナと一緒に中へ入ると、男は入口のドアを閉めた。
中は薄暗く、箱や、機械の様な物が、幾つか置いていた。
男はユズナの手を引き、倉庫の奥へ連れて行った。
「あの、子猫は何処に?」
ユズナは、倉庫の中を見ながら聞いた。
男が言っていた、棚などの、高い物は何処にも見当たら無かったのだ。
そして、ハッとして、男の方を見た。
「ここに居るじゃないか。」
男は、とても危険で異常な顔をして、笑いながら言った。
そして、ギュっとユズナに抱き着いた。
「あっ、キャーーーッ。」
ユズナは大きな声で悲鳴を上げた。
そして、男を押し退けようとしたが、男の力にかなう筈もなかった。
「いやーっ、止めて、離して。」
ユズナは体をバタバタとさせながら、力いっぱい抵抗した。
「無駄だ、大人しくしろ。」
男は低い声で脅すと、さらに強くユズナを掴んだ。
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