ダイジェスト版

第66話 第1部ダイジェスト版?(前編)

------巨大生物が人類と共存することは出来ないのか。

------僕は平和に過ごしたいだけなんだ。



 ◇



 僕は地震によって崩れてきた巨大な岩から母娘を救おうとして失敗したようだ。気がついたら真っ暗闇で、身体を自由に動かすこともできなくなっていた。

 そんな状況に陥って絶望していた僕に、不思議な声が聞こえてきた。


《こんにちは》


 僕は声の主に尋ねてみる。


---------------どなたですか?


《やっと〈あるじ〉である第一の脳に神経を接続できました。私は第二の脳です》


 僕に話かけてきた相手は、なんと第二の脳だった。そして僕は第一の脳。とにかく困り果てていた僕は、第二の脳へ質問した。


 ----------------僕らは何者なんでしょうか?


《何と言っていいか分かりませんが、巨大な生物です。そして人類の敵です》


 僕は不思議な巨大生物の第一の脳に転生し、人類の敵になっていた。

 どうやら僕は人間ではなくなった。しかも世界中に1匹だけしかいない謎の巨大生物で仲間もおらず、人類の敵。

 もの凄く動揺したのだが、会話が出来る第二の脳を別人格のように感じて、嬉しく思った。

 そこで僕は思いついた。第二の脳に名前を付けよう。そうすれば独りぼっちではない気分になれそうだと。

 僕は第二の脳へ提案する。


 ---------------君の名前は『ニノ』どうかな?


《分かりました。いいですよ》


 さらに僕はニノの姿を銀髪の美少女としてイメージした。

 気軽にイメージしたつもりだったのだが、あまりにリアルなニノの存在感に、僕はつい口走る。


 ---------------ニノ、可愛いな。


《……私にもイメージは伝わってきてますけど、その姿は第一の脳〈あるじ〉の想像ですよ?》


 最初は素気ない反応だった第二の脳だが、『ニノ』という名前と銀髪の美少女の姿が定着していく。



 ◇



 僕は今の姿を確認することにした。

 分かったことは、僕らは体長100m以上の巨大生物。雌雄同体で世界のどこかに卵がある。

 頭にはツノが3本生えている。しかも真ん中のツノがランタンのように白く光る。とても長い尻尾を持ち、尻尾の先から炎を噴射することも出来るのだ。

 始めは慣れない身体だったが、しばらく身体を動かす練習をしているうちに、まずまず動かせるようになってきた。光るツノ、尻尾の炎はとても便利で活躍した。


 僕らは深海に棲家を作り、そこを拠点に周辺の海を探索した。ニノの記憶力は優秀で、経験したことをほぼ完全に覚えてくれる。だからどこに行っても迷うことはない。

 僕らは四方を探索して、素敵な無人島を発見した。その無人島には、毛むくじゃらでモフモフした、とても可愛い巨大生物が生息していた。

 僕らはその無人島を気に入り、モフモフ島と名付けて通い続けた。


 ある日の僕らは、尻尾の炎を使ってキャンプと洒落込んだ。

 尻尾の炎でこんがりと焼いた巨大ガニと巨大イカ。香ばしくてとても美味しい。暗くなり僕らは焚き火の代わりに尻尾の炎を眺めて雰囲気を楽しんだ。


 その上空、雲の合間に、僕らの様子を観測している一機の偵察機の姿が煌めいていた。僕らはそれに気づかない。



 ◇



 無人島から西に位置する大陸には、アルティア共和国という超大国が存在する。その超大国には巨大生物防衛軍という巨大生物から本土を守る軍隊が組織されていた。

 巨大生物防衛軍には、ノックス中尉やファイン少尉という若い優秀な軍人が所属しており、無人島であるバムダ諸島に現れた巨大生物を追っていた。


 バムダ諸島に現れた巨大生物は『パウンド』と呼称され、危険な巨大生物として、アルティア共和国の巨大生物防衛軍は認識した。

 巨大生物防衛軍は、バムダ諸島へ上陸したパウンドへ向けて、総攻撃を開始すべく大艦隊を展開させた。



 ◇



 キャンプを楽しんだ数日後、僕らは再びモフモフ島を訪れた。

 モフモフたちに囲まれてのんびり寛いでいると、上空に爆撃機の編隊が現れた。

 僕らはすでに人間に見つかっていた。


 上空の爆撃機から大量の爆弾が降ってくる。


 ドガガアアアアア!

 ドガガアアアアア!


 痛い! 痛い! 痛い!

 爆撃が止んだと思ったら、今度はミサイル攻撃が始まった。


 ズドオオォォォォン!

 ズドオオォォォォン!


 とても痛い! 痛すぎる!

 頭部に直撃するとクラクラする。ミサイルは執拗に頭部を狙ってくる。頭部が弱点と分かっているようだ。


 ズドオオォォォォン!

 ズドオオォォォォン!


 この無限に続く執拗な攻撃は、僕らを完全に殺しにきていると僕は感じた。

 僕らはミサイル攻撃の合間に、多数の艦船が遠方にいることを発見した。間違いなくアイツらからの攻撃だ。

 明確な殺意を向けられて、僕は恐怖し、キレてしまった。

 僕はニノに確認する。


 ---------------あれ全部、沈められる?


《どれだけいても余裕ですよ》


 僕は艦隊を全滅させようと考えた。

 いよいよ攻撃を仕掛けようと思ったその時、僕はいつもと様子が違うニノの姿に気がついた。

 ニノは第一のばかりを攻撃してくる人間に怒っていた。

 しかし、その怒りをグッと堪えて、僕からの指示を待っている。

 ニノが耐えているのに、僕がここで怒りに任せて人間を攻撃してはいけないと僕は思った。

 僕らは人間と共存して、のんびり平和に暮らしたいのだ。ここで人間を殺してはしまってはいけないだろう。

 僕は自分自身に言い聞かせるようにニノに言う。


 ---------------手を出してはダメだから。


 僕らは人間への攻撃を踏みとどまった。

 僕らは人間と争うのではなく、人間と共存する方法を模索することにした。


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