第2部
第26話 のんびりと?
体長100mを超える巨大生物、その巨大生物の第一の脳に僕は転生した。転生した直後、身体を動かすことも出来ず途方に暮れていた僕に話しかけてきたのが第二の脳だ。
僕は別人格としか思えなかった第二の脳に名前を付けた。
ニノ
僕が想像したニノのイメージは、銀髪の美少女だ。
僕は銀髪の美少女ニノに助けられて、毎日を過ごしている。
ある時、アルティア共和国という大国に街を襲う巨大生物が現れた。それは黒い瘴気を纏う暗黒ヤドカリ。僕らは、災厄級とも言われる暗黒ヤドカリと戦った。
多くの人間が住む街を守るために。
僕らの行動を見て一部の人たちには、その気持ちが伝わった。
そんな暗黒ヤドカリとの戦いから半年が経つ。
それからの半年間で状況は、大きく好転していた。
◇
僕らは、モフモフ島でくつろいでいた。
毛むくじゃらでモフモフとした巨大生物がたくさんいる島だ。
僕らはモフモフとした巨大生物をモフモフと呼び、モフモフがたくさん生息しているのでモフモフ島と呼んでいる。
ネーミングは何の捻りもなく、そのままだ。
のんびりとした空気の中、僕はニノと会話をする。
---------------今日ものんびりだねぇ。
《いい天気ですね》
--------------モフモフ気持ちいいね。
《本当ですね》
人間に攻撃されて黒焦げになってハゲていたモフモフたちだったが、半年以上が経過して毛が生え揃い、元通り気持ちの良いモフモフに戻っていた。
復活したモフモフたちに囲まれて、心地よい日差しを浴びながらのんびりする。
まさに平和。
モフモフ島への上陸は自由にして良いことになっている。人間に見つかっても攻撃されることはない。
モフモフ島は僕らの生息圏になっている。ここから更に大陸へ近づかない限り攻撃されることはない。
そして、なんと今の僕らは人間の言葉を覚えて、会話もどきができるようになっている。正確に言うと僕らというか、ニノが人間の言葉を覚えてくれた。ニノが通訳の役割で、人間の言葉が理解できる。
こちらから話をする時は、ツノを点滅させモールス信号を送ることで解決した。モールス信号もニノが覚えてくれた。
僕が何の役にも立っていないようだが、そんなことはない。
話の内容は僕が考えている。役に立っていると思いたい。
言葉を覚えるために半年間、僕らの先生を務めてくれたのは軍人のお姉さん。暗黒ヤドカリ戦で僕らを助けてくれ、翌日焼き上がったヤドカリのお持ち帰りを薦めてくれた優しいお姉さんだ。
名前はファインさん。軍での階級は少尉とのことだった。
ファイン少尉の授業を僕とニノ、2人で一緒に聞いていたのだが、僕はさっぱり言葉を覚えることが出来なかった。そこへいくとニノは違った。聞いた話は一度だけでおおよそ覚えてくれる。ニノの記憶力はハンパではない。
ニノがすぐに覚えてくれるので、ファイン少尉の授業中は僕のお昼寝タイムになっていた。それでも怒られないし、居残りも課題も何もない。世の中の学生に聞かれたら怒られそうだ。
もう1人、僕らをサポートしてくれるのは、若い男性軍人のノックス中尉。暗黒ヤドカリを倒して街を救った僕らのことを『相棒』と呼んでくるとても熱い軍人だ。
監視役ということだが、あまり監視されている感じはしていない。すっかり信用してくれている。
僕らは人間に“パウンド”と呼称されているとも聞いている。
暗黒ヤドカリ戦の前までは、デルタ級というヤバイ区分に分類されて最上級に恐れられていたらしい。
危険と思われていた僕らだったが、暗黒ヤドカリを倒した今では、友好派と駆除派が半々ぐらいになったと言っていた。
友好派「暗黒ヤドカリから街を守ってくれた。人間に危害を加える巨大生物ではない」
駆除派「暗黒ヤドカリと縄張り争いをしただけだ。巨大生物は全て駆除しない限り安心できない」
現状の両者の言い分はこんな感じらしい。
僕らとしては、もっと友好派が増えて欲しいと思っている。
そして、いつか有効派が多数を占めたら、本土へも上陸してみたいと思っている。広々とした大地を思う存分に歩きたい。色々な景色を見てみたい。それが今の目標だ。
◇
《軍人さんたち、今日来ますよね》
ニノが笑顔で話しかけてくる。
ニノは人間が訪ねてくるのが嬉しいらしい。
---------------ファイン少尉とノックス中尉か、そろそろ来るかな。
ファイン少尉とノックス中尉、この2人は定期的にモフモフ島を訪ねてくる。
《あ、飛行機が見えましたよ》
遥か彼方の上空にこちらへ向かってくる一機の飛行機を発見した。
---------------来たね。立ち上がって待っていよう。
僕らは尻尾の椅子に腰掛けたダラっとした格好から立ち上がり、2人の到着を待つことにした。
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