第22話 幕間?(後編)
黒い瘴気を放つ巨大ヤドカリ騒動の後、巨大生物防衛軍司令部が置かれた軍事施設にある情報部センター室にて。
ベルーガ大佐の佐官室へパウンド対応チームのノックス中尉とファイン少尉が呼び出された。そしてベルーガ大佐がファイン少尉を叱責する。
「ファイン少尉、戦闘中にパウンドに近づくとは、あまりに危険ではないか。許可した覚えはないぞ」
「申し訳ありません、ベルーガ大佐。処分は覚悟しております」
それを聞き、ノックス中尉が話へ割って入る。
「ベルーガ大佐、車を運転していたのは小官であります。小官もファイン少尉と共に処分を受けます」
「ノックス中尉にファイン少尉、全くお前達二人は‥‥‥無事だったから良いようなものの。まあ、今回は住民の避難誘導ということにして、大目に見ておく。パウンドは、住民ではないのだがな」
「「ありがとうございます、ベルーガ大佐」」
「それからな、新型ミサイルの照準をデルタ・スリーに絞ることが出来たのは、お前たちのチームからの報告があったからだ。提出された分析内容と今回一連の結果が完全に一致したことについては、司令部も驚愕していたぞ」
「「はい。ありがとうございます」」
「それでファイン少尉は、パウンドとコミュニケーションに近いものが取れるという確信はあったのか?」
「はい。確信はありました」
「そうか、確信があったのか。ファイン少尉の叔母は、巨大生物とコミュニケーションが取れたという噂を聞いたことがあるが、ファイン少尉も同じなのか?」
「はい、いいえ。私はそのようなことは出来ません。私というより、巨大生物としてパウンドの方が特殊だと考えています。叔母のことについては、私も母から聞いただけですので、軍のレポートにある以上の報告はありません」
「なるほど、そうか。それでだな、今回のことだけで状況が一気に変わるという訳ではないが、防衛軍内でのパウンドへの見方は大きく変わった。引き続きパウンドへの対応はノックス中尉とファイン少尉のチームに任せる。これからが大事だぞ」
「「了解であります。ベルーガ大佐」」
上官としての話が終わり、ベルーガ大佐は穏やかな表情になる。そして軽い口調で、こう話を続ける。
「最後に二人への処分という訳ではないが‥‥‥あのデルタ・スリーの死骸を何とかしてくれないか。司令部でも、あと始末に苦慮していてな。パウンドにどこかへ運ぶように頼んでくれよ。どうだ? ノックス中尉」
「小官がでありますか。小官には荷が重いであります」
「それなら、ファイン少尉はどうだ?」
「はい。可能だと考えます」
「「本当か!!!」」
「次に来た時に頼んでみます」
「「凄いな、ファイン少尉!!!」」
会話の翌日、パウンドが現れ、巨大ヤドカリを運んで行く姿を見て、ベルーガ大佐とノックス中尉は衝撃を受けた。二人はパウンドが巨大ヤドカリを持って嬉しそうに去って行く姿を見守った。
◇
---------------あの軍人のお姉さん、ヤドカリくれたね。
「良い人ですね」
---------------モフモフ島で焼き直して食べてみようか。
「はい。ずっと味が気になってましたから」
◇
幕間完
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