転生したら体長100m超の巨大生物で人類の敵でした

同歩成

第1部

第1話 何が起こった?

------巨大生物が人類と共存することは出来ないのか。

------僕は平和に過ごしたいだけなんだ。



 ◇



 僕はどこにでもいる普通の会社員。先日26歳になったばかりだ。誕生日は友人たちが祝ってくれた。有り難いことだ。

 僕は自称160cmと少し小柄なので、筋肉をつけて少しでも大きく見せたいのと強くなって自信もつくかなと思い、スポーツジムに通っている。

 筋肉と自信をつけた無敵の僕は銀髪の美少女とお付き合いすることになるのが必然、そんな妄想を持っている。

 とりあえず現状は銀髪の美少女こそいないものの、友人や会社の同僚にも恵まれて平和な日々を送っていた。



 ◇



 とある休日、僕は惰眠をむさぼっていた。

 前日に仕事で長い間頑張っていたプロジェクトが完了し同僚たちと飲みに行き、帰りがすっかり遅くなってしまったからだ。

 今日一日ぐらいはダラダラ過ごしても良いよね、そう思って眠っていたのだが、どうやらそれは許されなかった。


 ドオオォォォォン! ゴガオオオン! ミシッミシミシ!


 突然、下から突き上げられたような、もの凄い揺れを僕は感じた。

 地響きに建物が軋む音が鳴り響く。この揺れ方は巨大地震か、只事ではない。


 僕は飛び起きて、窓から街の様子を確認してみる。

 僕の住む街は地方都市だが、それなりに人口のある街だ。その地方都市の街外れの小高くなった山際に僕の住むアパートは建っている。そんな立地のため、窓から街が一望できるのだ。


 窓から見た街は、いつもの見慣れた景色とは違っていた。人々が逃げまどい大混乱。崩れている建物もあり、さらには火の手が上がっている所まである。一部では、酷く土煙が舞っている。こんな街の様子は、今まで一度も見たことがない。

 何が起こっているのか確認しようと、慌ててテレビの電源を入れてみたが入らない。どうやら停電のようだ。スマホを使おうにも回線に繋がらない。

 そうしている間も揺れ続けている。長い地震だ。


 僕の住むアパートは古い建物、ここに居たら確実に死ぬ。何とか頑張って避難所である近くの中学校へ避難したい。

 そう思い少し揺れが収まったタイミングで外へ出る。周りには同じ避難場へ向かう人たちが走っていた。僕も寝不足で重い身体ながら一生懸命に走る。

 その時、再びもの凄い衝撃があり、山側で土砂崩れが発生した。目の前にいる母娘の頭上に巨大な岩が落ちてくる。近所でよく見かけるいつもニコニコして愛想の良い母娘だ。


 危ない!


 反射的に身体が動き、巨大な岩が落下しそうな地点から母娘を突き飛ばした。身代わりになるつもりはなく、僕自身も避けるつもりだったのだが、そうはいかず頭上に巨大な岩が迫ってくる。

 これはマズイ、避けられそうにない。ここで死ぬのか……



 ◇



 どのぐらいの時間が経ったのだろうか。完全に死んだと思ったのだが、ぼんやり意識が戻ってきた。目の前は真っ暗だ。

 上から押し潰されたと思ったのだが、その先の記憶がない。瓦礫の下敷きになっているのだろうか? それにしては痛みを全く感じない。どうやら瓦礫の下敷きになっているわけではなさそうだ。

 徐々に意識がはっきりしてくる。現状を把握しようと周りを見渡すが、薄暗くてよく分からない。

 一体ここはどこだろう?


 ゴボッ! ゴボボッ!


 大量の水を吸い込んだ。もしかして水中なのか?!

 僕は浮上しようと思い、薄暗い水中で必死にもがいた。

 しかし、何故だか分からないが、思うように身体を動かせない。

 このままでは溺れ死ぬ! さっき地震で死んだはずなのに。何度も何度も死にたくない!

 そんなことを思うが、どうにもできない。


 もうダメだ! 息が続かない!


 限界を感じた僕は大きく口を開けた。開けたというか、最初から空いていた口で大きく息を吸い込んだ。


 スウウウーーーハアアーーーースウウーーーハアアーーー


 アレ? 呼吸できるな。水中なのに? なんでだろう?


 ここは水中ではないのだろうか。

 周りの様子は暗くて分かりづらいが、深海といった雰囲気である。水中ということには間違いない。

 確実に僕は水を吸い込んでいる。水を吸い込んでいるのに息苦しさを感じない。理由は分からないが、水中でも普通に呼吸が出来ている。

 これならひとまず死ぬことはなさそうだが、状況が全くわからない。



 ◇



 僕は薄暗い水の中に沈んでいた。

 水中でも呼吸ができ、食事を取っていないのに空腹感もなく、他の生物に襲われるようなこともない。

 しかし、自由に身体を動かすことは出来ないままだ。これは一体どうしたものか。

 このままここで一生を終えるのか。そんなのは嫌すぎる。

 もしくは死ぬこともできず永遠にこのままなのか。それは怖い、怖すぎる。


 僕は絶望にくれたまま、薄暗い水の中を眺めていた。

 ぼんやりではあるが、視力がある。周りには小魚が泳いでいる。サメのようにも見えるが、ずいぶんサイズが小さく思える。

 気を紛らわせるために数でも数えようと小魚を凝視したところ、一斉に逃げられた。この仕打ちはなんなのか。


 あとどうにも気になっていることがあるのだが、僕の身体にフナムシのような生き物が取り付いている感覚がある。

 何だかとても気持ちが悪い。


 どれぐらいの時間が経っただろうか。

 つまらないことを考えて現実逃避をしていたら、少し身体を動かすことが出来るようになってきた。

 感覚として腕のようなものがある。脚も付いているようだ。

 水中で呼吸が出来るのは不思議だけれど、人間なのかな? ここはポジティブに考えておくとしよう。


 そういえば呼吸をした時に口があったなと思い出し、顎を頑張って動かしてみる。おお! 少しだけ動いたぞ!


 ガボボボボッ!


 もの凄い勢いで水を吸い込んだ。申し訳ないことにサメのような姿の小魚まで吸い込んだ。

 何やらとても大きな口のようだ。ポジティブに考えるのにも限度がある。やはり今の僕は人間の姿ではないのかも。



 ◇



 少しだけ身体が動くようになってきたので、僕は頑張って海底をゴロゴロと転がっていた。

 すると、その時。


《こんにちは》


 ん?! なんだ?! 声が聞こえた。

 聞こえたというよりは、意識に直接話しかけられた感じがする。

 絶望のあまり幻聴が聞こえるようになってしまった?!


《こんにちは》


 再び声が聞こえる。これは幻聴ではない!

 どうしようもない状況に光が射したと僕は思った。

 やった! 助かった! でも誰なんだろう?

 僕は声の主に尋ねてみる。


 ---------------どなたですか?


《やっと〈あるじ〉である第一の脳に神経を接続できました。私は第二の脳です》








〜あとがき〜

 1話目をお読み頂きありがとうございました。少しでも興味を持ってもらえましたらフォローや応援を頂けると嬉しいです。2話目で大凡の設定が掴めると思います。引き続きお読み頂けると幸いです。

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