俺ら隠れオタク達が青春します

向井 夢士(むかい ゆめと)

第1話 新学期はいつも緊張するよね

 俺はとても憂鬱な気持ちで起床した。何百回も聞いた携帯のアラームを止め、重い体を起こす。今日から春休みが終了し、新学期、新クラスが始まるのである。陽キャ男子は全く気にしないが、俺はあまり人とは話さないし、人付き合いが苦手だ。別に話すのは好きだし、仲良くなるとよく絡むけど、仲良くなるまでが大変だし、ネガティブなので悪い方向ばかり考えてしまう。


 ちなみに俺 井山涼いやま りょうは今日から高校2年生になる。親は仕事の影響やら、なんやらでなかなか家にいないので、実質一人暮らしのようなものだ。ちなみに料理は全然できないので、スーパーやコンビニの弁当ばかりだが……


 寝起きで、意識が朦朧とする中、なんとか朝の準備を終わらせ、玄関扉を開けると見慣れた姿を発見。


「おはよう、涼殿」

 少し太った体型に個性的なしゃべり方の友人、野山太のやま ふとしが家の前で、待っていた。


「ああ、おはよう」

 太は高校1年の時、同じクラスでオタク仲間として仲良くなった。話す相手がおらず、孤立してたらしいのだが、近くの席になり、意気投合した。たまたま授業で話す流れがあって、幸運だったよほんと。


「今日から新クラスで緊張するでござる……」


「大丈夫だって太。俺も吐くほど緊張してるよ」


「それより、涼殿は今期のアニメは何を見るのだ?」


「うーん。小指姫は告らせたいとかかな。あれ面白いし」

 いつも登校中はオタクトークをする。学校では周りの目気にしちゃうから躊躇してしまうのだが……


 そうこう20分ぐらいして、通っている 香川県私立 栄零学園(えいれいがくえん)に到着。すでに新クラスが発表されており、悲鳴やら歓声やら上がっている。


「えーといやま、いやま……」

 何気にこの苗字は出席番号がはやくて、見つかりやすいので便利だ。


「おっ、あった。4組か」


「涼殿! 私も4組ですぞ!」


「マジか! やったじゃん!」

 ほとんど知り合いがいない中で、太と一緒は嬉しすぎる。ボッチ回避。


 新クラスの教室に向かうと、やけにざわざわしていた。新クラスだからざわざわするものだが、にしては盛り上がりが大きすぎるような……?


「涼殿。たぶんあれですぞ。このクラス、ハイスペックメンツが多いのですぞ」

 俺のことを察してか、太が説明してくれる。


「ハイスペックメンツ?」


「まずは、明るくて人当たりがよく、運動もできるし、勉強もできる 樋渡日葵 《ひわたり ひまり》。そして、野球部で超絶イケメンかつ、プロ入りもできるほどといわれる 佐生征四郎さおう せいしろう。そして絶対的女王、山王真凛さんおう まりん。そしてその山王グループに所属する桐峰真玲きりみね まれい。この四天王プラスさらにも実力者が……」


「タンマタンマ! もうわかったから」

 いや怖いよ! どこから入ってくるんだよその情報! うわさは聞いてたけどさ。


「でも太、詳しいな。どこで知ったんだ? 他にもいろいろ知ってそうだし」


「ふっ、孤独な俺の情報量を舐めるな。空気と化してる俺は無敵なのだ」

 うん、太。涙ふけよ。

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