最新約・創世記(改)_2

九大文芸部OBOG会

最新約・創世記(改)_2                 

                               作者:紫水街


はじめに、神は天と地とを創造された。

天と地とがようやく八割がた完成した頃、クライアントから仕様変更のメールをお受け取りになられた。

神は大変お嘆きになり、「また作り直しである」と言われた。

再度天が完成すると、神は一旦コンビニをお作りになり、そこで栄養ドリンクを摂取された。

夜が明けた頃にようやく完成した地は闇に満ち満ちて、眠気が神を襲っていた。

神は「光あれ」と言われた。

すると電灯の光があった。

神はその光を見て、眠気を覚まされた。

神はその光と闇とを分けられた。

神は光を昼と名付け、闇を夜と名付けられた。

コンビニはずっと営業していた。

夕となり、また朝となった。

コンビニはまだ営業していた。

神は「良し」と言われ、再び栄養ドリンクを買われた。

徹夜一日目である。



神は音をお聞きになった。

メールが届いた音であった。

そのメールをお読みになり、神は「また変更である」と言われた。

変更された仕様では、水のあいだにおおぞらがあり、水と水とを分けられていた。

神はおおぞらを作って、水を上と中と下とに分けられた。

神はそのおおぞらを天と名付けられた。

おおぞらの中の水はワンカップと名付けられ、コンビニに置かれた。

神はそれを飲み、良しとされた。

夕となり、また朝となった。

徹夜二日目である。



神はまたメールをお受け取りになられた。

再三の仕様変更により、神は怒りに震えながら滂沱の涙をお流しになられた。

涙はおおぞらの下の水を塩水にした。

怒りは熱を生み、熱は水を蒸発させ、水の少ない場所が生まれた。

神はその乾いた地を陸と、塩水を海と名付けられた。

そこでまたメールをお受け取りになられた神はとうとうお笑いになった。

神は言われた、「草生える」。そのようになった。

陸には草が生い茂り、じゃがいもとオリーブが生まれた。

塩水とじゃがいもとオリーブから、コンビニにポテトチップスが生まれた。

神はそれをお召し上がりになられ、大変良しとされた。

夕となり、また朝となった。

徹夜三日目である。



神は上司のもとへお行きになった。

神は「時間外労働である」と言われた。

上司は「タイムカードが押されていないので労働ではない」と仰せられた。

神は涙を零しながら「然り」と言われた。

上司の元を去り、神は白紙のタイムカードを燃やされた。

燃え盛るあまたのタイムカードは大きな光となり、タイムカードの灰はあまたの火花となった。

神は薄い給料袋もついでに燃やされた。

薄さゆえに炎も小さく、それは小さな光となった。

神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、大きな光に昼を、小さな光とあまたの火花たちに夜をつかさどらせた。

日が生まれ、月が生まれ、給料日が生まれた。

それから神は「今日は給料日のはずである」と言われた。

しかし上司から返事はなかった。

夕となり、また朝となった。

徹夜四日目である。



神は仕事を続けられた。

神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上を飛べ」。そのようになった。

神は海の獣と水の生き物とを種類にしたがって創造された。

コンビニに貝ひもとスルメが生まれた。

神はまた、翼のあるすべての鳥を種類にしたがって創造された。

コンビニに唐揚げと手羽先が生まれた。

神はそれらをお食べになって、非常に良しとされた。

神はかれらを祝福して言われた、「産めよ、増やせよ、量産せよ」。そのようになった。

そして量産体制が整い、コンビニは増えた。

こうして資本主義が生まれた。

夕となり、また朝となった。

徹夜五日目である。



神はまた言われた。

「地は生き物を種類にしたがって出せ」

パソコンはコンパイルエラーを起こした。

そこで、神はもっと具体的に言われた。

「家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがって出せ」

人間が生まれた。

人間は家畜のごとくはたらき、疲れ果てて地を這い、獣のようなうめき声をあげていた。

神は「これは人間にあらず、社畜である」と仰せられた。

こうして社畜が生まれた。

それから神は試行錯誤のすえに家畜と、這うものと、地の獣とを創造された。

神は社畜を見て「これにすべての生き物を治めさせるのは、はなはだ不安である」と言われた。

しかし神は眠気に耐えられず、もう何でも良しとされた。

「わたしはすべての草とすべての木とコンビニとを与える。これはあなたがたの食物を得る場となるであろう」。そのようになった。

草木は麦を生み、麦はビールとなった。

社畜はコンビニで栄養ドリンクを買い、ポテトチップスを買い、仕事に戻り、ワンカップを買い、スルメを買い、貝ひもを買い、仕事に戻り、唐揚げを買い、手羽先を買い、ビールを買い、また仕事に戻った。

こうして社畜は社畜となった。

神はようやく仕事を終えられたのでビールをお飲みになり、はなはだ良しとされた。

夕となり、また朝となった。

徹夜六日目である。



こうして天と地と、その万象とが完成した。

神は第七日にその作業を終えられた。

クライアントはそれを見て、とりあえず良しとされた。

神がその第七日を祝福して、お眠りになろうとしたとき、上司からの電話をお受け取りになられた。

上司は「急な不具合が発生した」と仰せられた。

神は電話をお切りになり、それからぐっすりとお休みになられた。




これが天地創造の由来である。














この作品を書かれた作者さんは,こちらのアカウントでも活動されています

https://kakuyomu.jp/users/elbaite

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最新約・創世記(改)_2 九大文芸部OBOG会 @elderQULC

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ