なみなみから溢れたのかもしれない

 Day15 なみなみ


 ガラスのお猪口に注がれたお酒がなみなみを通り越し、お猪口が入ってる升の中へ溢れた。いつ手を止めるのかと眺めてたら、升のほうもなみなみを通り越してテーブルへ溢れ出たので、慌ててサキちゃんの手から徳利をもぎ取る。

 サキちゃんはアッハッハッハと酔っ払いらしく笑って、ゴメンゴメン酔っちゃったアッハッハッハなんて言うから、酔ってるねアッハッハッハって私も笑った。


「もう殺そうかと思って」


 笑ったままの顔で楽しそうな声で、目だけが一点を見つめて真剣だったから、あ、本気だって思った。私はサキちゃんのために何かしたいと常日頃から切に願っていたので、突如到来したこのチャンスに胸が高鳴った。だってサキちゃんは人間に擬態した宇宙人の私をアッハッハッハびっくりしたーって笑って、仲間を殺されて独りぼっちだった私と友達になってくれて、アッハッハッハって笑いながら人間らしく行動できるように指導してくれた恩人なのだ。

 今や仲間が増えた私たちと、敵対宇宙人との交戦に巻き込まれて死ぬ人間は結構いるから一人くらい死人が増えても問題ない。


「いい考えだね」


 役に立てそうなことがとても嬉しかったので、たぶん私の目も真剣だったと思う。



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