第二回戦

 あー、疲れた。

 俺はトボトボと歩きながら、ため息を付いていた。

 第一回戦は何とか勝ったが、振り返ってみるとギリギリの勝利である。

 こちらのHPは結構削られていたし、アレ以上攻撃を食らっていれば死んでいただろう。



 ……はー、次からは更に強い人達と当たるのか。

 勝てるかな……いや、勝たなきゃいけないんだけどさ。

 思わず弱気が首をもたげる。



「………………?」



 なんとなく視線を感じる気がする。もしかして俺のファンかな?

 それとなく周囲を見渡すが、それらしい影はない。悲しいなぁ。

 ファンとかいても困るけどね。コミュ障的に。



 それ以降は視線を感じなくなったので、多分気の所為だったのだろうと首を振る。

 それよりも次の対策をすべきだ。

 さっきと同じ感じの戦いをするつもりだが、万が一ロイコクロリディウムが通用しなかったらどうしようか。ステータス的には接近戦をしても良いのだが、ここぞというところで奇襲が出来ない。

 ドクを黒くしたのと同じ感じで、自分を黒くしてみようかなぁ……。

 それならば、「オレ、カゲ人間。自動操縦ヨ」みたいにいけ……いけ……いけないか。



 ざわざわとした喧騒を抜け、ジメジメとした路地裏に――、



「なん……だと……?」



 人混みを抜けたら、美しい街並みだった――。



【悲報】王都、綺麗すぎて心のオアシス路地裏が存在しない【朗報?】



 あ”アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!(絶叫)

 死んでしまうー! 俺みたいな奴はナメクジと同じで、ジメジメとした暗いところにいないと蒸発してしまうのだー! なのに王都は最初の街とは違って路地裏がないー!



 いや、正確には「路地裏」は存在するのだが、「ジメジメとした薄暗い路地裏」が存在しないのだ。

 例えるならば、ルーのはいっていないカレー。あるいは肉の入っていない肉じゃが。

 路地裏といえばジメジメだろ(偏見)。どうして王都の人間はそのような由緒正しき路地裏をなくしてしまったのか。愚かなことこの上ない。



 人間的に愚かな俺は、肩をがっくしと落としてポツポツ歩き、やがてベンチを見つけたので座った。

 あ^〜、生き返るわ〜。

 背もたれに体重をかけ、眩しい空を見上げ、



 ジュッ!(生命の燃える音)



「ジュワッ!?」



 俺は顔面を抑え、ゴロゴロと転がった。

 吸血鬼はね、日光に弱いんだよ……。

 その奇行を見られ、道を歩いていた皆さんに遠巻きにヤバいやつを見る目を向けられる。

 それに耐えきれなくなり何事もなかったかのように立ち上がると、パンパンと汚れを払ってその場を逃げ出した。黒歴史三分クッキング。創るのに三分もいらねぇぜ。



 ――俺は、あまりの羞恥に。

 こちらをじっと見つめる視線に、気がつかなかったのだ。

 ここで気づいていれば、あんな別れなどしなくても良かったかもしれないのに。



















 第一回戦が終わり、しばらく休憩して。

 第二回戦が始まろうとしていた。

 俺は緊張につばを飲み込み、手に滲んだ汗をローブにこすりつける。

 というかこんなところまでリアルに再現する必要ある? いつも思うんだけど。

 いや、ゲームだからこそリアリティを追求するんかな。知らんけど。



 現在位置は再び待合室。

 武器がおいてあるが、やはり俺は無視する。

 皆は目をきらっきらさせて選んでるけど、ちょっと羨ましい。

 普段は装備できないからなぁ。この機会にしておくべきか?



 ……何となく、何処からか不満げな気配を感じた。

 ロウかな。嫉妬ですかね。

 大丈夫だって、使わないから。安心しろよ〜。



 俺は武器が陳列してある場所に背を向けることで、ロウにその意志を伝える。

 何とか通じたようで、不満げな気配はなくなった。

 一体何処からこちらの様子を見ているんですかね。魔法的なやつかな。

 眷族とかいう名前なんだから、魂の繋がりとかがあってもおかしくない。あったらロマンだなぁ。ボッチの俺に、魂で繋がれた存在が…………。

 


 そのようにとりとめもないことを考えて、戦いへの緊張を解すのであった。



 ◇



「………………」



 第二回戦、何だけど。

 凄い相手が強そう。いや、強そうというか…………。



「あっら〜ん? ローブでお顔が見えないじゃな〜い。私ぃ、あなたみたいなミステリアスな男性、す・き・よ♡」



「ヒェッ(捕食されるかもしれない恐怖)」



 くねくねと腰をくねらせる、長身の……男性。

 ご丁寧に青ひげも生えており、もちろん頭は坊主だ。

 お約束すぎる。そしてお約束どおりならば、彼は滅茶苦茶強いはずだ。

 男は度胸女は愛嬌オカマは最強っていうからな。これは厳しい戦いになりそうだぜ……!



 というか、アレってロールプレイですよね?

 流石にあんなあからさまというかなんと言うか、Theって感じのはいないと思うんだけど。



「熱い視線を感じるわぁ。もしかして、私に惚れちゃった? ふふ、大歓迎よ♡」



「い、いや、無理っす(小声&超早口)」



 嫌じゃ嫌じゃ、彼とは戦いとうない!(のじゃロリ)

 別の意味で危険を感じる。大丈夫か、生きて帰れるかな?



「ホントはここでゆっっっっっっっくりと語り合いたいけどぉ(ねっとり)」



 けど……?



「戦わなくちゃね。悲しいけどこれ、試合なのよね」



 うーん、まともな意見。

 俺はそれに大いに同意し、深く深く肯いた。

 腰を落とし、体重を前にかける。普段だったらこのまま飛び出すか、相手の攻撃を反撃するのを目的に待つのだが、今の俺は魔法使い。マジックを見せてやるぜ!



「【寄生された触角】!」



「それ、既に確認済みよ♡」



 腕を前に伸ばして魔法陣からロイコクロリディウムを召喚する。

 第一試合と同じように行くと思ったのだが、相手が何処から出したかわからない弓矢で、正確に撃ち抜いた。まじかよ。



「………………」



 本当に、厳しい戦いになりそうだ。

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