第10話 七罪天

「はぐっ、もぐっ、はふ、はふ、おいしいぃぃ!!

 モグモグ! これもおいしいですぅぅぅう~!!

 こんなおいしいものはじめてですぅぅぅ!!!」


 よほどお腹が減っていたのか、

 シスターの少女はラクリマの作った食事を、

 一心不乱に食べている。


「まあ、ゆっくり食べなよ」

 

 オレがいうとうなづきながら、食べ続けている。

 食べ終えると正座して丁寧に頭を下げた。


「本当にありがとうございましたタイガさん、ラクリマさん!

 ご迷惑をおかけしただけでなく、食事までいただいて」


「いや、いいけど......

 君だれ?」


「はい私は、神聖教会所属のシスター、

 東金とうかねエクセントともうします」


「エクセントさん......

 神聖教会......

 オルトアポ......なんとかじゃないの?」


「真なる使徒オルトアポストルですか?

 私たちはあんなおかしな人たちではありません。

 もちろん悪しき魔法使いを捕らえることはありますが、

 それは魔法使いに対抗できない一般の人々を守るためです。

 命を奪うわけではありません」


「でも《永遠の魔女》を探してるんでしょ?」


「ええ、《永遠の魔女》はとても危険なのです。

 いままで途方もない数の同胞が殉教しているのです。

 生きとしいけるものの仇、災厄の獣、死の具現化、神を殺すもの、

 それが《永遠の魔女》です!

 ですが、命を奪うつもりはありません。

 魔法を封じるだけです」


「タイガさまお風呂が沸きました」


 その時、ラクリマが呼ぶ。


「お、オフロ!!」


 エクスさんはお風呂と聞いてソワソワしている。


「狭いけどラクリマと一緒にはいってきたら」


「よろしいのですか!」

 

「もちろん」


「では、ありがたくちょうだいします!」


 そういうと、

 跳び跳ねるように喜んでお風呂場にいった。


「えらい言われようでしたね。

 なにしたんすか?」


 オレはヒミコさんに聞いてみた。


「うん、昔ちょっと荒れていてた時があって、

 海外で少しだけおいたをしてしまったんだ。

 もちろん一般人を殺めるようなことをしてはいないが、

 悪の魔法使いどもを片っ端から昇天させていたのさ」


「......はい、何となくわかりました。

 彼女のいるとき隠れていてくださいよ」


「うむ、そうしよう。

 彼女ならば、真の使徒オルトアポストルのことを、

 知っていそうだ。

 聞き出してくれないかな」


「わかりました」


(また変な娘と知り合ったな。

 大変なことになりそうだ......)

  

 オレはそう思い畳に横になった。

 

「エクスさんの肌ってスベスベですね」


「ちょっと、くすぐったいですぅラクリマさん」


「キャッ、キャッ、キャ、ウフフ」


「ちょっと、いいかい?」


「なんすかヒミコさん」


「その二人のマネは楽しいのかい?」


 あきれたようにヒミコさんはいう。


「満たされないえちぃな想いを妄想で補ってるんす」


「それなら、こっそりのぞきでもやればいいんじゃないか」


「それはラクリマがきたときから、

 今まで夜も眠れないほど考えてました」


「......そんなに考えてたんだね」


「でも、本人の望まないことをするのは、

 オレの主義に反するんす」


「変なとこで紳士だね君は」


「もちろん二人が呼んでくれるなら、

 突入するのはやぶさかじゃないっす」


「そうか、そうなるといいね。

 おっと、どうやらでてくるよ」


 ラクリマとエクスさんがでてくる。

 

「すみませんお風呂いただいちゃって、

 それに服まで貸していただいて」


「いいっすよ。

 男物で悪いけど」


「服と下着は明日には乾くと思います」


「ありがとうラクリマさん」


 そうエクスさんは礼をいう。


「それでエクスさん。

 これからどうするの?」

 

「ここに《永遠の魔女》がいなかったので、

 本部の指示待ちですね。

 それで、タイガさんあなたに聞きたいことが......」


(さて、どうやってごまかした上、

 真なる使徒オルトアポストルのことを聞こうか......)


 その時、違和感を感じる。


「これは!?」


 周囲がオレの部屋から黒い神殿のようになっていた。


「エクスさん?」


「いえこれは私の奇跡ではありません......

 ラクリマさんとタイガさんは下がってください」


 そういうといつの間にか大きな十字架もって構えている。   


「いやいや、珍しい方もご一緒ですね」


 そういいながら神殿を、

 白い修道服を着て、

 とんがった白い帽子をかぶった老紳士が歩いてくる。


「あなたは確か...... 真の使徒オルトアポストルの!」


「はい七罪天の一人、強欲のゼーネスです。

 シスターエクセント」


 そう帽子を脱ぎ、胸に右手を当て老人は頭を下げる。

 

「何用ですか。

 ここに《永遠の魔女》はいませんよ」


「もちろん知っています。

 なにせ《永遠の魔女》は地獄へと落ちましたからね。

 わたくしの任務は《永遠の魔女》に奪われた聖遺骸の回収です」


 ゼーネスという背の高い老人はそういった。


「そんなもの奪ったんですか?」


 オレは小さくヒミコさんに聞いた。


「いいや、そんなものはないさ。

 おそらく僕の身体を奪うためにいった詭弁きべんだよ。

 これで彼らが僕の身体を狙っていることはほぼ確定だね」


 ヒミコさんが答えた。


「少年、それをこちらに渡していただけますか」


 そういうと笑顔のゼーネスはゆっくり歩いてくる。


(くるか!?)


 その時エクスさんはオレとゼーネスの間に割って入った。

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