閑話 元メンバー

 さて、その間ヨーロッパで活躍していた『斑鳩・フォーチュン・チルドレン』だが、日本に残っている元『スピン・メディア』の面々はどうなったのか。

 少しだけ補足を入れる。


 元「スピン・メディア」、ボーカル、ルナ。

 彼女は暫く、事務所に所属していたが、バンドも組む事もなく、コウキと同じようにくすぶり腐っていた。

 しかしこのままではいけないと思い、事務所を辞め、ボーカルオーディションに応募して始め、自分の力を試していたところ、たまたまオーディションに来ていた芸能事務所の関係者に見初められスカウトされる。

 やっと大好きな歌が歌える、と思ったルナであったが芸能事務所は俳優・女優を抱えている事務所だった為、ルナは女優としてデビューする事になってしまった。


「アタシは歌を歌いたいのに」


 最初はそんな風に思っていたのだが、ルナはいつの間にか演技にのめり込んでいき、ドラマ、映画、舞台と場数を踏んでいく。

 それこそエキストラから始まり、主軸を『舞台』に移しながら、尚且つ『ミュージカル』では一目置かれるようになっていた。

 そして今では主演を張れるぐらいの女優に成長した。

 徐々にメディアに露出するようになってきたのだが、ルナ自身は歌を諦めてはいない。


 元「スピン・メディア」、ギター、ススム。

 解散してから、完全にバンドから足を洗い、デザイン系企業に就職。

 就職先で営業を任されていたが、最初は中々成績が伸びず悩んでいた。

 そんな中『斑鳩・フォーチュン・チルドレン』が個人事務所を立ち上げることをコウキから聞き、サポートを依頼されて『斑鳩・フォーチュン・チルドレン』個人事務所の立ち上げメンバーとなる。

 現在では日本でのスケジュール、経理などを数人のスタッフで錐揉きりもみしている。

 そして『スピン・メディア』時代から付き合っていた彼女と結婚。

 幸せな家庭を築いている。


 元『スピン・メディア』ドラム、トオル。

 ススムと同じようにその後バンドから足を洗うのだが、新しくレーベルを立ち上げて様々なインディーズバンド、ミュージシャンを発掘して、世に送り出し『起業家』として頭角を現していた。

 先見の目もあるようで、その後レーベルだけでなく他にも子会社を五社も立ち上げ、どれも成功している上場企業として注目をされていた。

 しかしそのうちの二社が職場環境が余りにも悪く、辞めた元社員達一同に訴えられ、現在も裁判中。

 極め付けはブラック企業ランキングにノミネートされてしまい、信用回復に奮闘している。




 元『スピン・メディア』の面々は紆余曲折はあったものの、それなりに成功していたり奮闘していたりと忙しいようである。

『斑鳩・フォーチュン・チルドレン』は一体どういう風になっていったのか?

 それは更に五年の歳月を要することになる。

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