第4話 情報整理と能力
マンションへと帰る。
ベッドに寝転がりながら、クリスタルをにぎり情報をスキャンしていく。
基本的に必要な情報は意識を集中すれば教えてもらえるようだ。
そんなことをしている俺の視界の端で、フレイヤがザックから転がり落ちた魔石をかじっている。
そんなこともあるさ。ただそれ1個500円だからな。
情報を得て、なんとなく理解をした。
最終階層にいるモンスターがダンジョンマスターで、そいつが倒されると管理クリスタルのマスターが空位となってダンジョンが死ぬ。
だが、次のダンジョンマスターが、管理者になってダンジョンをつぶさないと、ダンジョンは残り続けるか……。
まあけど、見ればわかることだし、管理クリスタルを取り忘れるなんて言うことは無いか。
そんな馬鹿なダンジョンを見つけたら、クリスタルを貰いに行こう。
ダンジョンか。無限収穫菜園の会社でも作ろうかな? 完全無農薬で出荷し放題。ただし上の土地は自分のじゃないとまずいよな。
そういや、モンスターは倒されると消えると言うことは、収穫した瞬間に魔素に還元されるよな…… だめじゃん。
そんなうまい話はないか。
さて講習を受けに行って、ついでに買い取りカウンターがすいていれば売るか、売っても大丈夫そうな量の魔石を持って役所に行く。
「すみません、特別指定外来種駆除講習を受けたいのですが」
「そちらの、第1会議室が特外です。そちらでお問合せください」
振り返ると人が集っている方だった。わざわざ避けたのにやはりあっちか……。
とりあえず列に並ぶ…… ここで良いんだよな? きょろきょろと周りを確認すると特別指定外来種駆除講習受付の文字が目に入る。
あっちだったか、じゃあこの列は何だよ? 講習受付に進みながら横目で見ると魔石の買い取りカウンターだったようだ。
先頭では魔石のサイズが1cmよりでかいと、おっさんがごねているようだった。
自分ので確認すると、1cm~1.5cmまでは魔石が真球ではないため、比較的差が微妙なようだ、1.5cmまでは小にするのが正解だったんだろうな。
講習受付には誰も並んでおらず、簡単に受けつけできた。収入印紙を2500円分購入して台紙に張り付ける。身分証明書としてマイナンバーカードを見せて確認を受ける。
講習受講は1時間。その後試験は30分。試験内容は簡単な法律関係だったが、河川や山林への立ち入りの可否問題で、俺は神ではないのでサイコロを転がした。
すぐに、許可証が発行されるが、普段持ち歩くドッグタグは2日後に取りに来ることと言う事だった。チェーン付きで3500円也。
帰りに買取カウンターはあそこだけか聞くと、そうなんですと言われ、まだ叫んでいるおっさんを横目にあきらめて帰った。
そう言えばダンジョンマスターになって、近くにダンジョンがあるとなんとなくわかるようになった。それに深さもなんとなくわかる。なんでこんなことを思い出したかというと、帰り道で浅そうなダンジョンの気配がした。
この辺りなんだけど…… この家か。玄関に回り、チャイムを押す。
「はーい」
声がして家主が出てきたが、うん?
「はーい…… あれ、神崎くん久しぶり」
「あれ? ここ松沼の家か?」
「そうだよ、なに? 花束は持っていないようだから、何かの営業? 高校卒業以来だから5年? ぶりなのに……」
「なんで花束?…… 営業と言えば営業だな。お前んちの庭かどこかに、ダンジョンができているだろう?」
「ダンジョン?…… あの穴かな? 結構小さいよ」
案内されて、裏庭にぽっかり空いた穴に案内される。
「これか…… さすがに入れんな」
直径50cmほどの穴のふちに手を置き、ダンジョンにアクセスする。構造はほぼ竪穴で奥に女王アリ、総数兵隊入れて250匹くらい。深さも250mくらいだけど結構部屋数があるな。
先住の管理者が居る場合、構造変更はできないようだが、情報にはアクセスできる。ダンジョンマスターは、結構無敵でいろんな能力特典も持っている。
「この中、アリのモンスターがいるみたいだけど、出てきたことは無いのか?」
「うんないよ」
「そりゃ、運がよかったな」
「それじゃあこれ売ってくれ、1万でいいかな?」
「えっ、この前埋めるのにいくら掛かるかわからないって言われたのに」
「それじゃ、良いんだな」
「うん」
「じゃあこれ」
そう言って松沼に1万円を渡す。
「ちょっと材料買ってくるから、見張っといて。出てきたら逃げろよ」
と言って、近くの薬局に買い物に行く。燻煙タイプの殺虫剤を買い込みついでにステンレスの大きい鍋の蓋〔\18800円もした〕をホームセンターで購入してきた。
畜生、鍋の蓋があんなにするなんて……。
荷物はダンジョンマスター特典、亜空間収納にしまってある。
松沼の家に戻り、鍋の蓋や燻煙材を取り出して準備ができると、殺虫剤に火をつけて放り込んでいく。とりあえず20個ほど放り込んで、鍋蓋で蓋をする。
中の様子は、ダンジョンにアクセスして情報を探っていると、下から順に死滅していくのが分かる。女王もうろうろしていたが生命反応が消えた……。
よし、鍋の蓋を収納して中の殺虫剤を排出する。
煙がほぼ抜ければ、ダンジョンを操作してクリスタルや魔石を地表まで押し出し、それが終わればダンジョンを閉じて終了だ。
「よし、作業終了だ」
横で見ていた松沼は目を丸くして驚いている。
「えっ、今のは何?」
「企業秘密だ」
そう言ったが、手を振り回しながら、
「あんな、地面が勝手に動いて、穴も勝手にふさがって、あんなに深かったのに……」
などと言ってくる。
その後はなんだか、放心状態だったので放置して帰ろうとすると、ガシッと手首をつかまれた……。
「せっかく久しぶりに会ったのに、慌てて帰ることは無いじゃない。それにこれって、本当はこっちがお金払わないといけない作業じゃないの?」
そういう奴の顔は、獲物を見つけた肉食獣の様に、怪しく目が光っている。
とっさにやばいと思い、逃げようとしたが、家に引っ張り込まれた……。
俺は昔の事を少し思い出し「お前に会いたくはなかったんだよ」とボソッとつぶやいた。
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